恋女房染分手綱 / 勧進帳
1998/10/17
10月の歌舞伎座は「勧進帳」が目玉。有楽町に用事があったついでに、幕見で観ることにしました。
恋女房染分手綱重の井子別れ
早めに行かないと入れないと用心して一つ前の「恋女房染分手綱」から入ったところ、重の井が鴈治郎丈で太夫と三味線が竹本谷太夫・鶴澤泰二郎とくれば「これは泣きの芸だな」と睨んだ通りで、重の井と三吉(実は与之助=鴈治郎丈の孫の壱太郎が見事)の親子の別れに本気で涙腺を刺激されてしまいました。
勧進帳
一方、お目当ての「勧進帳」は幸四郎丈の弁慶、團十郎丈の富樫。幕見席は立ち見が鈴なりとなる満員大入りで、外国人も少なくありませんでした。舞台は期待通りの大きな芸、貫禄十分で荒事の力感に満足です。ただ最後の見せ所である「飛び六法」は、幕見席からでは花道がほとんど見えないのが残念でした(だから料金が安いので仕方ないのですが)。
配役
恋女房染分手綱 重の井子別れ |
乳人重の井 | : | 中村鴈治郎 |
自然蔗の三吉 | : | 中村壱太郎 | |
腰元若菜 | : | 市川右之助 | |
本田弥三左衛門 | : | 坂東吉弥 | |
勧進帳 | 武蔵坊弁慶 | : | 松本幸四郎 |
富樫左衛門 | : | 市川團十郎 | |
亀井六郎 | : | 市川染五郎 | |
片岡八郎 | : | 尾上辰之助 | |
駿河次郎 | : | 市川新之助 | |
常陸坊海尊 | : | 松本錦吾 | |
源義経 | : | 中村雀右衛門 |
あらすじ
恋女房染分手綱重の井子別れ
幼い姫につかえる乳母重の井は、むずかる姫をなだめようと呼び込んだ馬士の三吉に「そんならわしのかかさまじゃ」と抱きつかれてびっくり仰天。よくよく話を聞くと確かにその昔余儀無く別れたわが子だったが、立場上親子と名乗れない。泣きながら去っていく三吉を断腸の思いで見送る。
勧進帳
奥州藤原氏を頼って、山伏姿に身をやつし北陸路を急ぐ義経主従。安宅の関を守る富樫は一行を厳しく詮議するが、即興で勧進帳を朗々と読み上げ、山伏の謂われ等淀みなく答える弁慶の機転に通行を許す。ところが強力姿の義経が富樫の配下に見破られ、あわやというとき、弁慶は疑いを晴らすため義経を金剛杖で打擲して見せる。主従の必死を察した富樫はそれ以上の追及をやめ、酒をふるまう。弁慶も富樫の恩情に気付き、大盃を傾け、延年の舞を披露して、安宅を去っていく。