マヌエラ・カラスコ

2000/11/19

「フラメンコの女王」マヌエラ・カラスコの舞台を、五反田のゆうぽうとで観ました。

1954年セビリア生まれのマヌエラ・カラスコは、10歳でその才能を見出されプロ・デビュー。15歳で自分のフラメンコグループを結成するなど早くから頭角を現わし、堂々たる体躯から迸る情熱的なダンスで「フェスティバルの女王」「ジプシーの女神」などと呼ばれ日本でも人気が高いのですが、今回の来日が最後のステージになるらしいとの情報を京都の友人から得てチケットをとったのでした。

会場に開場時刻に着いてみると、ロビーにはいろいろな販売コーナーが並んでいます。プログラムの他にフラメンコ関係の書籍やビデオがおいてあるのは当然として、アバニコ(扇子)などのフラメンコ・グッズが売られているのは珍しいし、スペインのシェリー酒や各種オリーブの缶詰が試飲コーナー付で並べられているのはスペイン物産展といったノリ。つられてシェリー酒の小壜を買ってしまいました。

第一部 カーニャ マヌエル・ベタンソス
アンヘル・アティエンサ
アルフォンソ・シモ
アルバロ・パニョス
アルフォンソ・ロサ
タラント マヌエラ・カラスコ
アレグリアス ラファエル・デ・カルメン
ファルーカ マヌエル・ベタンソス
アンヘル・アティエンサ
シギリージャ マヌエラ・カラスコ
第二部
トゥリアーナのフィエスタ
タンゴス マヌエル・ベタンソス
ガロティン アンヘル・アティエンサ
サパテアード アルバロ・パニョス
アレグリアス マヌエラ・カラスコ
タンゴ・デ・マラガ アルフォンソ・シモ
ブレリア・ポル・ソレア ラファエル・デ・カルメン
ブレリア アルフォンソ・ロサ
ソレア マヌエラ・カラスコ
ポル・フィエスタ 全員

ステージは、ギター3人とカンテだけのシンプルな構成をバックにまず男性5人の恐ろしくキレのいいダンスで幕を開けました。ついでアンダルシア東部を起源とするタラントでマヌエラ・カラスコが登場。見るからに肝っ玉母さんという感じで、舞台上での存在感は他を圧しています。確かにマヌエラ・カラスコのサパテアード(わざわざスカートをたくし上げて足を見せてくれる)はそれ自体が見事ですが、それ以上に、彼女が踊り出した途端に会場全体の雰囲気が緊迫感を帯びたことに感銘を受けました。フラメンコには「ドゥエンデ」という言葉があって「真のフラメンコには不可欠と言われる、説明できないある感覚」と言われていますが、マヌエラ・カラスコの神懸りのような入り込みかたは、ショーアップされたこれまでのフラメンコダンサーのステージとは一線を画するもののように感じられます。

第二部はタイトル通りパーティー風景を模したステージで、舞台後方にフィエスタ風景の大きな絵が掲げられ、その前に半円形に並べられた椅子と酒を置いた小さなテーブルが装置となって、全員が思い思いに椅子に腰掛け、時折グラスを空けながら順番に中央に出て踊っていきます。どのダンサーも最初は楽しげに、しかし次第にヒートアップして全力で踊りきる様子が素晴らしく、最後はマヌエラ・カラスコが暗い曲調の中に激しい情熱を秘めた渾身のソレアを踊って、大きな拍手の中エピローグ的なポル・フィエスタで幕を閉じました。

このステージを見て初めて、いつかスペインに行って本場のフラメンコを見てみたいという気持ちになりました。

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