塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

リバーダンス

2000/11/23

アイリッシュダンスの大御所「リバーダンス」を、東京国際フォーラムで観ました。

1994年にユーロビジョン歌謡祭の7分間の幕間劇として作られた「リバーダンス」は、ヨーロッパの視聴者の大きな反響に応えて2時間の舞台ショーに変貌し、1995年にダブリンで初演されました。そのときのリードダンサーの1人がマイケル・フラットレーで、後に契約面での紛争から「リバーダンス」を離れた彼が新たに立ち上げたのが、1月に観た「ロード・オブ・ザ・ダンス」です。

ステージは2部構成になっており、第1幕では太古にアイルランドに渡った人々がアイルランドの自然や伝説に溶け込み、定着していくさまが描かれ、第2幕では19世紀の飢饉などの中でアメリカに渡ったアイルランド人が新しい文化を自分のものにしながらアイルランドの伝統を守り、やがてアイルランドへの帰郷を果たすというストーリーになっています。音楽面では、リズム隊はドラム、ベース、パーカッションのロックスタイルですが、シンセサイザーによるストリングスの上にアイルランドらしくフィドルやギター、管楽器などが加わります。その哀愁とパワーとが共存する音楽の上で打撃系中心のアイリッシュダンスが踊られると共に、フィドルやパイプのソロ、テノールの熱唱、フラメンコ、タップダンスとの競演などの盛り沢山な内容が詰め込まれていて正味2時間を飽きさせず、総じて「ロード・オブ・ザ・ダンス」よりも親しみやすく観客のノリもよいショーでした。

第1幕

  • 太陽を巡るリール
  • 心の叫び
  • カウンテス キャスリーン
  • クーフランの哀歌
  • サンダーストーム
  • シヴナ
  • ファイアダンス
  • 春はそこまでー収穫
  • リバーダンス

第2幕

  • アメリカン・ウェーク
  • 新世界の港
    • 心を癒してー自由
    • トレーディング・タップス
    • マケドニアの朝 / ロシアン・ダーヴィッシュ
    • 世界の鼓動ーアンダルシア
    • リラ
  • 故郷そして故国
  • フィナーレ

アイリッシュダンスとフラメンコとはどちらも打撃系舞踊と言われることがありますが、今回短期間のうちに両者を見比べることができて、だいぶ違いがあることがわかってきました。

まず、フラメンコのサパテアードはどちらかというとかかとへの立ち込みが目立ち、膝を軽くゆるめて中腰に近い状態であまり足を上下させずに靴底の前後を使い分けるのに対し、アイリッシュダンスの場合は頭のてっぺんから腰までが真っすぐで顔は基本的に水平方向を向いており、足の位置はどちらかの爪先を他方の足のかかとの後ろに置くクロスポジションが基本のよう。また、足の上げ方もはっきりと見た目のキレを重視しており、かかとを尻に着くまで後ろへ蹴り上げたり、逆に前へ上げるときはももが地面に平行になるまで上げるといった具合です。女性の場合はこれにバレエのアントルシャが加わっており、このように、打撃そのものよりも前後の足の動きで見せる部分が大きい点がアイリッシュダンスの特徴であるように感じました。

さらに言えば「リバーダンス」ではマスゲーム的によく統制された群舞の迫力が見どころになっており、基本的に個人技で勝負するフラメンコとはこの点でも異なりますが、考えてみると、もともと生い立ちの違うダンスをかたちで比較することにはさして意味がなさそうなのでこのへんで。