John Wetton
2003/09/23
5月に会ったfruuppさんとの、下北沢のバー「Revolver」での会話。
F「John Wetton、行くんですね」
J「これは『義務』ですから」
fruuppさんは笑っていましたが、そう言いながらJWの地方巡業総見のため広島・大阪・名古屋まで行く貴女は超えらい(もっともJWを見にイギリスやアメリカまで行くfruuppさんにしてみれば、広島なんか隣の庭くらいなのかも?)。そこまで筋金を入れることはできないものの、私もファンの務めを果たすべく、渋谷クラブクアトロへ。今回のツアーは最新アルバム『Rock of Faith』のプロモーションなので、一応出掛けに30分で一通りの予習をしてから来たのですが、実を言えば、この新譜は私にはあまりピンときませんでした。JWのソロとしては、これまで他に3作発表されていますが、最初の『Voice Mail』が演奏も歌もタイトで楽曲に緊張感があり、一番できが良いと思います。
……といったことを考えながら渋谷クラブクアトロの狭い階段で列を作るためにとんとんと下っていたら、fruuppさんとばったり。入場までのわずかな時間におしゃべりをしたところ、やはり今回のツアーでも日によってJWの声(&ベース)の調子は乱高下しており、大阪は↓で名古屋は↑だったとのこと。「今日が当たりの日だといいですね」というfruuppさんの温かい言葉(?)を背に、オールスタンディングの会場に入りました。
自分の立ち位置はJWの真正面で、コンソールのすぐ前。背もたれはあるし、幸い目の前に背の高いヤツが立つこともなく、結果的にベストポジションとなりました。1時間待って開演6時を少し回ったところで照明が落ち、毎度のことのように不必要に長いイントロのクラシック曲が続いて、やがてブルーのライトの下、お揃いで短髪を赤く染めたギターとキーボードがまず入ってきました。今回のツアーメンバーは前回見たON AIR EASTでのメンツからIan McDonaldを除いたもの、つまりギターがJohn Mitchell、ドラムがSteve Christey、キーボードがJohn Beckです。そして鐘の音、雨垂れの音のSEから新作1曲目のインストナンバー「Mondrago」で思わせぶりに盛り上げておいて、おもむろにJW登場。カウントが入って始まったのはAsiaの「Sole Survivor」でした。照明が正面から当たってJWの姿が映し出された途端、そのビヤ樽状のお姿に思わず「まるで伊良部だ!」と唸ってしまいました。もっともそれは前回もそうでしたし、かつて中野サンプラザに登場したときに比べれば心なしかスリムになっているような気もしないではないのでまぁいいのですが、イントロに続いてJWの声を聞いた途端、もう一度「これはサッチモだ!」と唸ってしまいました。うーん、お世辞にも声の調子がいいとは言えないぞ。
ロックテイスト抜群の「Sole Survivor」に続いてU.K.の「In the Dead of Night」。John Beckのくねくねキーボードがひときわ光りましたが、シンセのフレーズだけでこれだけ聴かせる曲はなかなかあるまいと、改めてEddie Jobsonのセンスに感心しました。曲が終わって期せずして聴衆からU.K.コールが起こり、JWも「わかっているよ」という表情で「キミタチサイコダヨ」とやって大受けでしたが、「ふぅ」と一言ため息をついたのは何?以下、King Crimson、U.K.、Asia、そしてソロの曲が交互に演奏されました。
「Book of Saturday」と「The Smile Has Left Your Eyes」(JW「これはジェラシーについての歌」)はアコギとシンセで、「Walking On Air」と「Who Will Light a Candle」(JW「ロックに戻る前にもう1曲ソフトな曲を」)はキーボードだけをバックにJWが歌い、このときは声の調子があがってきたか?と思ったのですが、続く「Rendezvous 6.02」では元のサッチモボイスに戻っていたのでがっかりしました。インストの「Red」はイントロなしでメインリフから始まったので最初なんの曲かわからなかったのですが、中間部のベースがよれよれだった点を除けば気合が入っていましたし、ラストの「Heat of the Moment」はこれさえ演っておけばJWファンは納得するのだからまさに最終兵器!しかし、新譜からの「A New Day」と「Take Me to the Waterline」もライブ映えのする曲で、特に後者は今日一番の演奏だったと思いますし、演奏が終わると他のオールドソングにも増して大きな拍手を集めていたのは、長年のJWファンとしてもうれしく思いました。
John Mitchell、Steve Christeyとも前回見たときよりも演奏が安定しており、またJohn Beckが楽曲の進行を司っていてドラマーに対しタイミングだしをしていたのは番頭格のようにすら思えて貫禄。しかし彼が「In the Dead of Night」のシンセトリルを首をぐるぐる回しながら弾くのは、やっぱりちょっと不気味。前回も書いたことですが、たとえどれほどJWの声の調子が悪くても楽曲そのものに魅力があるのでなんとかライブが成り立つというのは、凄いといえば凄いことです。ただ、我々はJWの曲を聞き込み過ぎているので、もしかすると勝手に脳内補正をかけながら聴いているのかもしれず、またそうでないにしても「しょうがないなぁ、John」と極めて寛容(?)になっているのは間違いありません。もし、そうした思い入れをもたないまったく初めてのリスナーをここに連れて来ていたらどういう評価をしたかと想像すると、恐いものがあるのも事実。
JWの日本ツアーは明日が最終日。私は行けませんが、fruuppさん、明日が当たりの日だといいですね。
……とか言っていたら、最終日は「前日とは別人」のように調子がよかったようです。くそ〜、それでもプロか!(逆ギレ)
ミュージシャン
John Wetton | : | vocals, bass, guitar |
John Mitchell | : | guitar, vocals |
John Beck | : | keyboards, vocals |
Steve Christey | : | drums |
セットリスト
- Mondrago
- Sole Survivor
- In the Dead of Night
- Don't Cry
- Voice of America
- A New Day
- Book of Saturday
- The Smile Has Left Your Eyes
- Walking On Air
- Who Will Light a Candle
- Rendezvous 6.02
- Take Me to the Waterline
- After All
- Starless
-- - Red
- Battle Lines
- Heat of the Moment