第36回日展

2004/11/21

東京都美術館(上野)で「第36回日展」を観てきました。といっても、なにしろ日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書と多岐にわたる展示であるだけに、まともに観ようと思ったらまる一日かかってしまいます。そこで今回は日本画に時間をかけてしっかり観て回り、洋画はざっと、その他はつまみ食いするような感じで観ることにしました。

会場に入ってまず思うのは、とにかく大作ばかりであること。いずれもタテヨコ2mを超えるような存在感のある作品ばかりで、それが日本画部門だけで390点も並んでいるのだからもう大変。日本画のフロアを終えた時点で早くもへとへとになってしまいました。それでも、日本画・洋画と観て回って感じたのは、日本画部門の充実ぶりです。モチーフ、技法とも大胆かつバラエティに富んでいて、これだけの数を観て回っても見飽きるということがありません。一つ一つの絵のテーマがはっきりしている作品が多いのも特徴で、「濡れた砂浜の反射」「土に埋もれていた恐竜の化石の質感」「彼岸花の鮮やかな赤とフォルムの面白さ」といった一発芸的な絵がけっこうあってぐっときます。一方で、逆説的になるほどなぁと思ったのは人物画。ほっそりした輪郭線で描かれた女性像も少なからずあったのですが、洋画部門の多数の肖像画が実現しているリアルな質感や確かな描写力に太刀打ちできている作品はごくわずかだと感じました。日本画のDNAが持つ様式性が、人物造形には向かないということなのでしょうか。その点、洋画部門では息を呑むような、あるいは心ときめくような女性の肖像画がたくさんあって、そのたびにこれはモデルがいいのか画家の技量なのかと、一緒に観ていた山仲間ユウコさんと議論になりました。

彫刻・工芸美術・書にも観るべきものはたくさんあったと思いますが、この日の午後には実家へ顔を出さなければならなかったので適当に覗き見ておしまい。ここはしっかりと時間を確保して、美術館の中で一日を過ごすつもりでかかるべきだったと少々後悔しました。

なお、日本画に関していうと、表彰とは無関係に私が気に入ったのは下の数点。もちろん、他にもすてきな絵がいくらでもありました。

  • ▲《凝視》木村卓央氏
  • ▲《道》北野治男氏
  • ▲《隠逸》長谷川雅也氏
  • ▲《森の雫》猪熊佳子氏
  • ▲《黒雲と赤土》飯田祐二氏