ドン・キホーテ(アメリカン・バレエ・シアター)
2005/07/27
先週のガラに引き続いてABT、今度は「ドン・キホーテ」を東京文化会館(上野)で観ました。会場ではABTのDVDが放映されていて、ちょうど「黒鳥」の場面、グラン・フェッテでくるくると回るとディスプレイの周囲を固めたバレエ少女たちから「おぉ!」とどよめきが沸く。そのオディールこそ今日キトリを踊るジリアン・マーフィーです。訳知り顔の女の子が「今日はもっと回るわよ」と予言していましたが、まさにそのとおりになりました。というわけで、先週は「アンヘル・コレーラ、ブラボー!」でしたが、今日は「ジリアン・マーフィー、ブラボー!」。
開幕後すぐに登場したジリアン・マーフィーのキトリは、コケティッシュさはあまりなく、どちらかというとさっぱりした性格の持ち主でした。それが表情や演技、そして踊りにも反映していて、気持ち良くキトリの動きを見続けることができます。次いでギターを抱えて現れたホセ・カレーニョのバジルは、茶目っ気たっぷり。回転技がとてもしなやかで、大らか。第1幕のパ・ド・ドゥでは、キトリはスネアロールとともにサポートされての高速ピルエット一発で客席の拍手を引き出したり、一動作で5回転も回ったバジルに飛び込んでいってピルエット→アラベスク→アティテュードがすらすらと決まります。バジルの回転系のヴァリエーションに続いてキトリのヴァリエーションでは上手奥から下手手前へきれいな直線を描きながら美しいペアテ16回転。そして片手リフト2発でコーダが終わります。
第3幕のグラン・パ・ド・ドゥでは、アダージョのプロムナード後のバランスこそ若干不安定でしたが、それぞれのヴァリエーションで、バジルは大胆に背中を反らせながらのマネージュ。そしてキトリのグラン・フェッテでは1-1-3回転。続いてダブルのところでアバニコ(扇子)を顔の前に持ってくるポーズをかませて客席から「きゃーっ!」といった驚きにも似た掛け声が掛かり、これを2セットやって後は満場の手拍子とともに高速で回りきりました。
こんな具合に主役2人の存在感は(第2幕のドルシネアも含めて)まったく申し分なかったのですが、演出面でも振付的にも他の登場人物が弱くて、見るからに身体も動きも重そうに見えたメルセデスやいまいち装飾性のないダンスに終始したエスパーダ、すぐに主役をバジルに譲ってしまったジプシー達、といずれもちょっと寂しかったかも。夢の場面のキューピッドがかわいらしく溌溂とした踊りを見せてくれて楽しかったのですが、やはり全幕で観る以上、主役とそれ以外のバランスはやはり大事。ともあれ、今回はガラと全幕の両方でABTの素晴らしいダンサーたちの姿をじかに観ることができて幸福でした。ABTの次の来日を、楽しみに待ちたいものです。
配役
キトリ | : | ジリアン・マーフィー |
バジル | : | ホセ・マヌエル・カレーニョ |
メルセデス | : | ヴェロニカ・パールト |
エスパーダ | : | デイヴィッド・ホールバーグ |
ドン・キホーテ | : | ギョーム・グラファン |
サンチョ・パンサ | : | アレハンドロ・ピリス=ニーニョ |
ガマーシュ | : | フリオ・ブラガド=ヤング |
ロレンソ | : | アイザック・スタッパス |
木の精の女王 | : | ミシェル・ワイルズ |
キューピッド | : | マリア・リチェット |
花売り娘 | : | ユリコ・カジヤ ミスティー・コープランド |
ジプシーの踊り | : | サラワニー・タラタニット ジーザス・パスター |
指揮 | : | デイヴィッド・ラマーシュ |
演奏 | : | 東京フィルハーモニー交響楽団 |