Lez Zeppelin

2008/10/01

Led Zeppelin のトリビュート・バンドLez Zeppelinのライブを、渋谷クラブクアトロで。Zepのカバーバンドは世界中にそれこそ星の数ほどあるでしょうが、NYCで結成されたLez Zeppelinは女性ばかり4人ながら演奏のクオリティとエモーショナルなステージが評判になり、日本でもCD『Lez Zeppelin』が発売されて、今回はその一夜限りのプロモーションライブということになります。

定刻をわずかに過ぎたところで照明が落ち、歓声が湧く中に重低音が鳴り渡って、下手からメンバーが位置につくと、パワー全開で始まったオープニングナンバーは「Immigrant Song」。光沢が美しいシルクの衣装に身を包んでLes Paulを低い位置にかまえたギタリストのStephと、Fender Mustang Bass(どうしてJazz Bassにしないんだろう?)を操るベーシストのLisaにはさまれて、ボーカルのSarahが冒頭のシャウトを始めると、そこはもうZepの世界。

続く「What Is and What Should Never Be」ではドラが打ち鳴らされ、Gibsonのダブルネック(「Thank You」)やDanelectroの3021(「Kashmir」)も登場したし、「Dazed and Confused」ではヴァイオリンの弓を使ったボウイング(お約束のエコートリックも(微妙にぎこちないものの)もちろん)、アンコールの「Whole Lotta Love」ではテルミンと、トリビュート・バンドの必殺技とも言うべき小道具やギミックもちゃんと登場していますが、それはともかくとして、安定したリズムセクションの上に存在感のあるギターが乗った基本の演奏力がしっかりしているのが何といってもうれしいところ。ベースのLisaは「Thank You」「Since I've Been Loving You」「Kashmir」ではKORG Tritonも駆使。ドラムのHelenはパワフルな体格で渾身のドラミングを聞かせてくれました(さすがに「In My Time of Dying」の「ドンドドズドンド」というJohn Bonhamの強烈なバスドラ連打の音圧を再現することはできませんでしたが)。

しかし、とにかく特筆すべきはSarahのボーカルです。最初の「Immigrant Song」こそPAのバランスが悪くてボーカルが楽器に埋もれ気味でしたが、次の曲でその点が修正されるとどんどん調子があがってきました。「Black Dog」や「Rock and Roll」でのストレートな曲もパワフルなボーカルで聴かせましたが、彼女の真骨頂は「Since I've Been Loving You」での情感溢れるボーカルワーク。その圧倒的な説得力には、鳥肌がたちそうになるほど感動しました。そして大好きな「In My Time of Dying」で、赤い光の中に仁王立ちになって叫ぶ「Oh my Jesus!!」のリフレインなんかもう最高!この見事なパフォーマンスと「Black Dog」などでの客席との掛け合いで見せたコミュニケーション能力、そして打って変わった初々しいMCとで聴衆の心をがっちりつかんだ彼女が2度目のアンコールとなる最後の曲に選んだのは、あの恐ろしくノドに負担を強いる「Communication Breakdown」。この難曲を見事に歌いきったSarahは、このライブに立ち会った誰にとっても、もはやRobert Plantの代用ではなく、自立したヴォーカリストとして次のステージを待望される存在になっていたに違いありません。

上手寄りのReserve席に座っていた一見ミュージシャン風の男性がライブ開始前から飲み過ぎてハイテンションになり、途中で外国人客とつかみ合いの喧嘩をして自ら退場するというアクシデントもありましたが、その一点を除けば、ステージ上のパフォーマンスも聴衆のリアクションも共によく、小さな渋谷クラブクアトロの空間に相互のリスペクトが通い合う、タイトでフレンドリーな110分間のライブでした。「Stairway to Heaven」を演奏しなかったのはライブの流れからするとむしろ適切な選曲だったと思いますが、強いて言うと「Kashmir」よりは「Achilles Last Stand」をやって欲しかったかな。

ミュージシャン

Sarah McLellan vocals
Steph Paynes guitar, theremin, vocals
Lisa Brigantino bass, keyboards, vocals
Helen Destroy drums

セットリスト

  1. Immigrant Song
  2. What Is and What Should Never Be
  3. The Lemon Song
  4. Thank You
  5. Since I've Been Loving You
  6. Dazed and Confused
  7. The Ocean
  8. In My Time of Dying
  9. Black Dog
  10. Kashmir
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  11. Rock and Roll
  12. Heartbreaker / Whole Lotta Love
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  13. Communication Breakdown