塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

天下人の愛した茶道具

2016/10/10

三連休の最終日、畠山記念館(白金台)で「天下人の愛した茶道具」を見てきました。その展示趣旨は、次の通り。

室町後期に誕生した侘び茶は、江戸時代にかけて変遷、展開を遂げます。ことに信長が名物茶道具を積極的に求めたことから、武将たちの間に茶の湯ブームが巻き起こりました。今回は、彼らが華やかに演出した「黄金と侘び」をテーマに、信長、秀吉、家康ら天下人ゆかりの品々をご紹介いたします。

展示期間の後半に披露される《煙寺晩鐘図》〈国宝〉や《竹林山水図》〈重文〉はこの日は展示されていませんでしたが、それでも銘信長の井戸茶碗や千利休作の茶杓をはじめ、唐物茶壺、茶入、釜、棗が秀吉や家康からどのように伝わったかといった解説と共に展示され、さらには豊臣秀吉筆が実母に宛てた書状や青磁香炉(銘 浅間)、安国寺恵瓊が所持していた印子金鎖などもあって、点数は少ないながら一つ一つを興味深く眺めました。

書状 豊臣秀吉筆 桃山時代(16世紀)
篠虫図 伝 趙昌筆 竺仙梵遷賛 南宋時代(13世紀)
誠仁親王御書状   安土桃山時代(16世紀)
古銅耳付花入 銘 西湖   明時代(16世紀)
扇面月兎画賛 本阿弥光悦筆 江戸時代(17世紀)
天命平釜   室町時代(15〜16世紀)
井戸茶碗 銘 信長   朝鮮時代(16世紀)
福寿文字入帛紗   明時代(16世紀)
茶杓 銘 落曇 千利休作 桃山時代(16世紀)
古瀬戸肩衝茶入 銘 円乗坊 室町時代(15世紀)
網代塗手付煙草盆 原羊遊斎作 江戸時代(19世紀)
呉須橋人物文火入   明時代(16世紀)
宝珠形独楽煙草入   16世紀
松椿鶴蒔絵沈箱   室町時代(16世紀)
唐津塩笥茶碗   江戸時代(17世紀)
ととや茶碗 銘 隼   朝鮮時代(16世紀)
共筒茶杓 小堀十左衛門作 江戸時代(17〜18世紀)
金輪寺茶器 藤重作 江戸時代(17世紀)
豆彩騎馬人物文茶器   清時代(17〜18世紀)
高取水指   江戸時代(17世紀)
菊桐蒔絵炉縁   江戸時代(17世紀)
紫金銅建水   明時代(17世紀)
呉須千切蓋置   明時代(17世紀)
印子金鎖   15世紀
天命責紐釜   室町時代(16世紀)
青磁香炉 銘 浅間   明時代(16世紀)
香木蘭奢待    
菊桐蒔絵棗   桃山時代(16世紀)
共筒茶杓 津田宗及作 桃山時代(16世紀)
唐物肩衝茶入 銘 星   南宋時代(13世紀)
唐物茶壺 銘 十五夜   明時代(15世紀)
梅に山鳥図屏風 伝 狩野山楽筆 江戸時代(17世紀)

香木蘭奢待の切片まであったのにはびっくりしましたが、その歴史的価値はともかく、眺めて楽しいものではないかも。ともあれ、こうした名品たちが世の移り変わりにもかかわらず現代まで大事に受け継がれてきたというそのことに、深い感動を覚えます。

ところで、この畠山記念館は能登国主畠山氏の後裔で荏原製作所の創設者でもある畠山一清氏(1881-1971)が蒐集した茶道・能楽関係の美術品を収蔵しており、旧寺島宗則伯爵邸のあった土地を買い取って私邸としていたものを、1964年に財団法人畠山記念館として公開の美術館としたものだそうです。

そうした由来があるだけに、展示室の中にも茶室があるほか庭園内に茶室が点在しており、紅葉の時期にはさらに風情が増すことであろうと思われました。