東京フィルハーモニー交響楽団 ニューイヤーコンサート2018

2018/01/03

Bunkamuraオーチャードホール(渋谷)で、毎年恒例のニューイヤーコンサート……と言っても私が参加するのは初めてです。

Bunkamuraの入り口には、お正月らしく門松が立ち、会場内では八海山の樽酒が有償で振舞われていました。この日は、あらかじめ用意された「こうもり 序曲」「チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番」「ボレロ」の他に、福袋プログラムとして30曲(後掲)がリストアップしてあり、お客は入場時に自分が聴きたい1曲を投票する仕組みになっています。

オーチャードホール内は華やいだ雰囲気です。私も盛装で臨みましたが、着物姿の女性もちらほら。そしてピンクの花が飾られたステージの上の女性演奏家の皆さんも、思い思いのカラーのドレス姿でした。指揮は阪哲朗氏、そして演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。以下、曲間に司会の朝岡聡氏のトークを交えながら進行しますが、限られた時間の中で多くの曲を演奏する都合上、多くが短縮版に編曲されての演奏でした。

J. シュトラウス:喜歌劇「こうもり」序曲
まず、誰にでも親しみやすいこの曲からスタート。明るい旋律の数々が次々にそのモチーフを重ねて、浮き立つような気分にさせます。特に有名なワルツの部分は、いかにもヨハン・シュトラウス。
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
ここで、福袋プログラムの中から1曲を指揮者の阪哲朗氏が転がした大きなサイコロで選びました。出た賽の目は20番。この曲の切羽詰まったような雰囲気は、ロマの音楽をブラームスが採譜・編曲したものだからかもしれません。チャールダーシュらしく、途中で曲想が変わります。
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ長調 Op.23より第1楽章
このコンサートの白眉となるチャイコフスキーのピアノ協奏曲は、仲道郁代さんによって弾かれました。誰でも知っている有名な導入部から、ピアノとオーケストラが交互に役割を変えながらどんどん曲の深いところへと分け入っていく感じで引き込まれました。低音の密集の迫力は少しショッキング。

第1部が終わったところで休憩となり、獅子舞が登場しました。小太鼓と笛の囃子に乗って舞った獅子はロビーで客の頭に次々に噛み付いていて、噛まれた方はとてもうれしそう。

ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲(冒頭)
ニューイヤーと言えば洋の東西を問わず、ラデツキー行進曲(本当?)。後で本格的に演奏するので、まずはさわりだけの演奏ですが、それだけでも会場が温まります。
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークより第1楽章
ここで再び福袋プログラムからサイコロ投票が行われました。まず司会者が入場チケットの半券からくじ引きのように1枚引いて当たった人がサイコロを投げる権利を得たのですが、なんと上手はるか上の方の立ち見席にいた米国人の若者が当たり、ひとしきりのインタビューの後に彼が転がした賽の目によって選ばれたのが、この「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」でした。弦楽の響きが実に軽やか。これを間近で聞けた若者は、幸せ者です。
エルガー:「威風堂々」第1番
投票結果の発表があり、第3位はスメタナの「モルダウ」、第二位はJ.ウィリアムズの「スター・ウォーズのテーマ」、そして堂々第一位がエルガーの「威風堂々」。あの勇壮な冒頭の部分は後ろに回されて、雄大に流れるメインテーマから演奏されました。
ラヴェル:ボレロ
おなじみ「ボレロ」、何度聴いても高揚します。ここでシルヴィ・ギエムが踊るところを観たかった……。
ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲
ここでチケットの半券によるプレゼント大会があり、ポール・スチュアートのジャケットやら毛ガニやらセルリアンタワー東急ホテルの宿泊券やらアシアナ航空の海外往復航空券やらが当たりましたが(半券が司会者によって引かれるたびにオケの打楽器が鳴り物よろしく効果音)、最後の景品はラデツキー行進曲を指揮する権利。当選した年配の男性はいたく恐縮していましたが、見事な指揮ぶりでした。
ヨハン・シュトラウス2世:「雷鳴と稲妻」
アンコールはポルカ「雷鳴と稲妻」。その名の通り、随所に雷が落ちるようなダイナミクスに満ちた曲で、オケの中のあちこちにカラフルな傘の花が咲きました。

冒頭に書いたようにBunkamuraのニューイヤーコンサートは初めてでしたが、これは楽しい!これから毎年の恒例行事になるかもしれません。

なお、福袋プログラムの曲目リストは以下の通りです。私が投票したのはベートーヴェンの「田園」でしたが、こうして見ると新年を言祝ぐにふさわしい軽快な、あるいは流麗な旋律を持つ曲がセレクトされている感じ。しかし、もし弦とハープしか使用せず沈鬱そのもののマーラーの「アダージェット」が当たっていたら、この1年はいったいどういうことになってしまっていたことでしょう?

  1. モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークより第1楽章
  2. モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲
  3. ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』より第1楽章
  4. ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』より第1楽章
  5. J.シュトラウスⅡ:ワルツ『美しく青きドナウ』
  6. スッペ:『軽騎兵』序曲
  7. パッヘルベル:カノン
  8. バッハ:G線上のアリア
  9. マーラー:交響曲第5番より第4楽章“アダージェット”
  10. メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』より第1楽章
  11. マスカーニ:歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲
  12. フェラーリ:歌劇『マドンナの宝石』間奏曲
  13. ロッシーニ:歌劇『ウィリアム・テル』序曲より”スイス軍の行進”
  14. オッフェンバック:喜歌劇『天国と地獄』序曲より“カンカン”
  15. ビゼー:『アルルの女』第2組曲より“ファランドール”
  16. ビゼー:歌劇『カルメン』前奏曲
  17. エルガー:行進曲『威風堂々』第1番
  18. シベリウス:交響詩『フィンランディア』
  19. グリーグ:劇音楽『ペール・ギュント』より“朝”
  20. ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
  21. スタメナ:連作交響詩『わが祖国』より“モルダウ”
  22. チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』より“情景”
  23. チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』より“花のワルツ”
  24. グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲
  25. ボロディン:歌劇『イーゴリ公』より“ダッタン人の踊り”
  26. ハチャトゥリアン:バレエ『ガイーヌ』より“剣の舞”
  27. J.ウィリアムズ:『スター・ウォーズ』よりテーマ
  28. J.ウィリアムズ:『スター・ウォーズ』より“帝国軍のマーチ”
  29. J.ウィリアムズ:『ハリー・ポッター』よりテーマ
  30. ハンス・ジマー:『パイレーツ・オブ・カリビアン』