パコ・デ・ルシア セクステット

2001/05/20

フラメンコギタリスト、パコ・デ・ルシアを聴きにBunkamuraオーチャードホールへ。

パコ・デ・ルシアの名前を初めて知ったのは1980年に結成されたジョン・マクラフリン、アル・ディ・メオラとのスーパー・ギター・トリオの一員としてでしたが、彼のプロギタリストとしてのキャリアはもちろんそれよりはるかに古く、1967年には20歳で初のソロアルバムを発表し、1973年の「Fuente y ca udal」(邦題:二筋の川)の大ヒットでスペインでは早くからビッグ・ネームでした。近年、私がフラメンコにも関心をもつようになったので、機会があれば長い間名前を知っているだけの存在だった偉大なギタリストの演奏をじかに聴いてみたいと思っていたところ、今回の来日を知りすぐにチケットを手に入れたというわけです。

席は1階のずっと後ろの方の右側、ステージからはかなり離れています。定刻にステージに現れたパコは、拍手で迎える聴衆に会釈してから椅子に座り、おもむろにソロの曲「カマロン」を弾きだしました。最新作『ルシア』の最後に収められた、親友カマロンの死を悼む曲です。ただし、CDでは披露されていたパコの歌はここでは歌われませんでした。続いて2人のパルマ(手拍子)とパーカッションが加わって「エル・チョルエーロ」(ブレリアス)、ギターやベースが加わっての「弾薬通り」(アレグリアス)とルンバの楽しい曲調の「マンデーカ・コローラ」。ここではベーシストはマンドリンを大きくしたようなラウーを弾いていました。そして全員=パコ、ギター×2、ベース、フルート、パーカッション、カンテ、バイレによるブレリアスの「エル・テンプル」で第一部が終わり。カンテは高音が伸びていい声を出していました。

ここまででも十分楽しめたのですが、メンバーの本領が発揮されたのは休憩後に展開した第二部でした。新譜からのゆったりした「メ・レガーレ」(タンゴ)に続くアレグリアスの「サン・ファン広場」では、強烈なタンギングのテクニックを聴かせたフルートのソロに続いてカホンのバトル、ホアキン・グリロのキレのいいバイレなど圧倒的な個人技の応酬が続き、本編最後の「シリヤブ」では中ほどでギター2本のもの凄い掛け合いが聞かれました。妙なたとえで純粋のフラメンコ・ファンには恐縮ですが、King CrimsonのRobert FrippとAdrian Belewが「The CostruKction of Light」と「FraKctured」でやって見せた、2本のギターが一音ずつ交互に弾いて一つのフレーズを紡ぎ出すというアレです。そして会場を揺るがすような手拍子に応えたアンコールの曲は、セミアコっぽいベースのソロから始まって、途中のパコの超絶フレーズが半端ではなく凄まじいものでした。6弦の低音部から1弦の高音部まで超高速で駆け上がりまるで炎が噴き出すようなフレーズとその音圧には、会場全体が完全に圧倒されていたようでした。フラメンコ・ギターでの右手の奏法を知らない私には、いったいどうすればこんな高速フレーズが弾けるのかまったくの謎です。それにしても、こんなに凄い演奏が聴けるのなら、もっとしっかり予習してから会場に足を運べばよかったと後悔しました。

ミュージシャン

パコ・デ・ルシア ギターラ
カルロス・ベナベン ベース
ルベン・ダンタス パーカッション
ホルヘ・パルド フルート / サックス
ラモン・デ・アルヘシーラス ギターラ
ラファエル・デ・ウトレーラ カンテ
ホアキン・グリロ バイレ
ホセ・マリア・バンデーラ ギターラ

参加メンバーは上記の通り。これで「セクステット」というのはどういうカウントをしているのでしょうか?

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