Dream Theater
2006/01/13
2年ぶりのDream Theaterのライブを、東京国際フォーラムで観ました。最新作『Octavarium』をフィーチュアしたツアーで、バンド結成(当初のバンド名はMajesty)20年という区切りのツアーとしても位置づけられていました。
今回はチケットをとったのが遅かったため、とれた席は2階席の21列目。つまりはかなり後ろ(上)の方で、ステージ全体を見渡せるのはいいのですが、なにしろ遠く、ステージ上の機材も人も豆粒のようです。そんなわけで、どうせ2階席は立ち上がったりしないだろうから昆布茶でもすすりながらゆったり聴けるかな、と思っていたのですが……。
定刻を5分ほど過ぎたところで低音のイントロが流れ始め、やがてメンバーがいつもの位置に登場すると、1曲目は『Six Degrees of Inner Turbulence』からの「The Glass Prison」。おや、オープニングは新譜の最初の曲というのはいつもとパターンが違うな、とは思いましたが、目の前で繰り広げられている演奏は最初からスピード全開だし、予想に反しいきなり周囲が総立ちになっているものだからあまり気にせずこちらも立ち上がって声援を送ります。といっても、途中でテンポが変わり比較的ゆったりするパートではJames LaBrieの求めに応じて1階席の客が「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」なんて拳を突き上げているのが見えますが、さすがに2階席までは伝染せず、Mike Portnoyが派手にシンバルを叩きながらも後ろのドラム・テクに顔を寄せて何事か指示しているのを冷静に眺めていたりします。この後、ギターソロとキーボードソロの応酬になるのですが、Jordan Rudessの前にあるのは長年使い慣れたKurzweilではなくKORGのOASYSで、これが実にいい音を出しています。さらに彼のキーボードブースの下手手前に立てられた台の上にやや小振りの楽器が設置されていて、これが話題のフレットレスキーボード「Continuum」のようです。たぶん、リボンコントローラーのお化けといったところなのでしょう。
そうこうするうちに曲間なしで2曲目、『Train of Thought』からこれもフルパワーで突っ走る「This Dying Soul」。この頃には音のバランスが安定してきて、もうなんの不安もなく聴けます。この2曲目が、最後に考えられないスピードでのギターとキーボードの長大なユニゾンをばっちり決めて終わったところでMCが入ります。「こんばんは、トーキョー。今夜は東京でのショウの二晩目です」。これを聴いて思わずギクリ。というのは、彼らは同じ都市で連続してショウを行うとき、2日目のセットリストはとんでもない選曲をすることがあって、前科としてはMetallicaの『Master of Puppets』全曲コピーなんていうのがありますが、もしかして今日もそのパターンなのか?
そんなこちらの危惧をよそに、ステージ上では新譜『Octavarium』から「Never Enough」と「Panic Attack」。かたやキーボード、かたやベースでのイントロからダークなリフになだれ込む似た雰囲気をもった曲ですが、いずれの曲でもJames LaBrieのボーカルは声量も高音の伸びも素晴らしく、まさに絶好調です。そして5曲目、いよいよContinuumの出番で、Jordan Rudessが太い存在感のある単音をぐりぐりと弾き倒し、さらにギターが入ってリズムが加わると、ノリが良くて大好きな「Just Let Me Breathe」。この曲でJordan Rudessは、左手OASYS、右手Continuumのユニゾンでロングトーンのシンセフレーズを弾いていましたが、これが実にかっこいい。やはりプログレキーボードは、複数のキーボードを弾かなくては。さらに、「Falling Into Infinity時代の曲だ」との紹介があって初めて聴く、しかしなかなか壮大な感じの曲。さらに「Home」が演奏されて休憩に入ります。
休憩中は、アコギで弾かれる『Awake』の曲が流れていました。それも15分ほどで、第2部へ。
ステージ上にメンバーが戻ってくると、ドラム台の向きが変わっているのに気付きます。今回のツアーでのMike Portnoyのツインモンスターは下手側セットがJohn Bonhamのようなシンプルなセットになっているのですが、そのセットが正面を向くようにドラム台が斜めにされているようです。そしてそのスモールセットから繰り出されてきた細かいスネアロールにJordan Rudessのオルガンが絡んだとき、「こ、この雰囲気は?」と気付きました。そしてあのギターのコードが入り、ついにJames LaBrieが「Song called Highway Star!!」。うわー、そうきますか。John Bonhamではなく、Ian Paiceだったのね……。ここからは、Deep Purpleの名盤『Live in Japan』が、文字通りまるまる全曲、そのまま演奏されました。途中でMike PortnoyがJohn Petrucciに「いちいちチューニングし直すな!Don't check!!」なんて突っ込みを入れたりしてアット・ホームな雰囲気も漂ったりしていましたが、曲の構成やフレーズはもちろんライブ盤のものだし、「Smoke on the Water」のイントロのあのギターやエンディングの掛け合い、「Lazy」や「Space Truckin'」でのオルガンのエフェクトももちろん再現されています。「Space Truckin'」の最後にJohn Petrucciが音を出したままのギターをステージ上に置き去りにして、メンバーが下がり暗転。盛大な拍手はそのままアンコールを求める手拍子に変わりました。
アンコールは荘厳な「The Spirit Carries On」と、そしてこれはお約束の「Pull Me Under」。3時間余りのライブはこの名曲で終了しました。しかし、まさかこの日がDeep Purpleデイになるとは予想もしておらず、また久しぶりにプログレテイスト漂う新譜『Octavarium』の曲をじっくり聴きたいと思ってきていたので、正直多少がっくりきたのですが、たまにはこういう色モノ(?)に当たるのも悪くはないかもしれません。メンバーはいずれも素晴らしい演奏でしたし、特に普段おとなしいベースのJohn MyungがギターのJohn Petrucciと共に再三ステージの最前面に繰り出してきていたのが印象的で、彼は終演後も積極的に最前列のオーディエンスが伸ばす手にタッチしていました。そしてJames LaBrieのボーカルも最高だったのですが、しかしながら!彼が歌う「Child In Time」や「Space Truckin'」を聴きながら、Ian Gillanがいかに凄いヴォーカリストだったのかを改めて再認識したのもまた、事実ではあります。もっともこれは、高調波主体とは言っても伸びやかな高音を得意とするJames LaBrieとシャウト・スクリーミングに特徴があるIan Gillanとのスタイルの違いだから、どちらが上というわけではないのですが……。
ミュージシャン
James LaBrie | : | vocals |
John Petrucci | : | guitar, vocals |
Jordan Rudess | : | keyboards |
John Myung | : | bass |
Mike Portnoy | : | drums, vocals |
セットリスト
- The Glass Prison
- This Dying Soul
- Never Enough
- Panic Attack
- Just Let Me Breathe
- Raise the Knife
- Home
-
Deep Purple Medley - Highway Star
- Child In Time
- Smoke on the Water
- The Mule
- Strange Kind of Woman
- Lazy
- Space Truckin'
-- - The Spirit Carries On
- Pull Me Under