塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

Asia

2008/05/12

Asiaのオリジナルメンバーによる昨年のライブを見て、特にJohn Wettonの復調ぶりに喜んでから1年余り。今度はこの4人では実に25年ぶりの新作『Phoenix』をリリースして、彼らは日本に戻ってきました。

このアルバムもそこそこよい出来だと思いますが、そんなことに関わりなく彼らは私にとって世界遺産並みのリスペクトを払うべき連中なので、産業ロックと言われようがロートルと言われようがマンネリと言われようが脳軟化症と言われようが(←そこまでは言われていない)四の五の言わずにチケットをゲット。まずは東京国際フォーラムです。

ステージ上の配置は昨年通りで、中央がJohn Wetton、やや下手奥がCarl Palmer、そして両翼は下手Steve Howeと上手Geoff Downes。Geoffのキーボードはさらに増えて9台を3方向に積み上げ、さらに手前に1台。例によってRolandのシンセが基本ですが、上手の一番上に乗っていたのはMoog Little Phattyでした。

19時10分に照明が落ちて、クラシカルな曲に乗ってライトショウ、2面のスクリーンにAsiaのロゴが稲妻と共に浮かび上がります。そして登場した4人が最初に演奏したのは意外!「Don't Cry」発表時のシングルB面の「Daylight」。これは聴いたことがないという客も多いのではないでしょうか。しかし、どうやらJohnの声は今回も好調、そしてフットペダルの重低音もセンスよく決まります。続く「Only Time Will Tell」ではGeoffがシンセの音色設定を誤ったようで、イントロをちらっと弾きかけましたがすぐにストップし、あわてて設定を変えてからリスタート。「Wildest Dreams」の最後でJohnがこの日一番のボーカルを聴かせた後、ニューアルバムからの「Never Again」ではSteveがアグレッシブなソロを披露しました。

復刻シリーズの1番手は「Roundabout」。1stヴァースはリズムがバラバラではらはらしましたが、2ndヴァースできっちり立て直し、昨年よりも引き締まったよい演奏となりました。この曲でも感じましたが、あのリズムの悪いCarlが今回はかなりシュアなドラミングをしていて、どうやらJohnのプレイをしっかり聴けている感じ。各曲のラストのキメでも、Johnは後ろを振り向くことはないのにリズム隊がびしっと合うのがさすがです。続いて「Time Again」の後にGeoffのキーボードソロは「Cutting It Fine」のコーダ部分(「Bolero」)ですが、これは毎度あまり感心しません。Steveのアコースティックギターソロは、何やら易しげなコード弾き(Yesの『Open Your Eyes』に収録されていた「From the Valcony」のモチーフが聴けたような気がしますが不明)から定番の「Clap」。さらにJohnも12弦のアコギを持ってきて「Voice of America」を朗々と聴かせましたが、Johnの声が素晴らしかっただけに、彼のギターがエフェクトかけ過ぎのチープな音になってしまっていたのが残念です。そのまま4人のアコースティックセットで「The Smile Has Left Your Eyes」「Ride Easy」(←シングル「Heat of the Moment」のB面)と進み、エレクトリックセットに戻って大好きな「Open Your Eyes」。中間部のギターとシンセの平行ユニゾンが心にしみます。

復刻シリーズ2番手は、輝かしいトランペット音のイントロで「庶民のファンファーレ」。中間部ではSteveとGeoffがインプロヴィゼーションで掛け合います。さらにスリリングな「Without You」、新譜からの「An Extraordinary Life」と進んで、「宮殿」「ラジオスターの悲劇」が昨年と同じアレンジ&演出(Geoffのラメ服・サングラスとかJohnのハンドマイクとか)で続きます。この辺りは工夫が無いとも思えますが、やはりCarlが安定しているので安心して聴けるし、「ラジオスターの悲劇」はとにかく理屈抜きで楽しく、大勢の客が踊り出します。さらにJohnの「ドラムソロが聴きたいかい?」というMCに続いて、「The Heat Goes On」からドラムソロ。相変わらず見栄えのするスティックさばきで客席を湧かせていましたが、レギュラーグリップ一辺倒のCarlがこのソロの中で部分的にマッチドグリップを見せたのが斬新に感じました。そして本編最後はお約束、大ヒット曲の「Heat of the Moment」。Geoffはショルダーキーボードでファンサービス。

アンコールは2曲。「Don't Cry」はSteveのスティールギターがあまりにも音程が悪く残念な演奏でしたが、最後の「Sole Survivor」はベースペダルの重低音の上に安定したベースとドラムのシャッフルが乗って、原曲とアレンジを変えていないにもかかわらずマーチ風の不思議なリズム効果が生まれていました。

ショウの構成としては、各人のルーツ曲はなくして新譜からの曲をもっと採り上げてもらってもよかったように思います(たとえば「Alibis」「Shadow of a Doubt」あたりはライブでも聴いてみたかった)が、演奏自体は上述のようにリズム隊の2人が良く、Johnのボーカルも好調で「凄い!」と感動する場面が何度かありました。Geoffは堅実で、Steveはピッキングが甘くリズム・音程とも要改善。

さて、明日はどうなるでしょうか?

2008/05/13

この日は渋谷C.C.Lemonホール。ファーストアルバム『Asia』の全曲演奏、というのがこの日の目玉となります。果たしてAsiaの4人の体力は最後までもつでしょうか?

この日は、最初に「Daylight」「Never Again」を演奏した後、怒濤のルーツ曲4連発(ただしJohnが「宮殿」をやるのはどうしても納得いきません)。「ラジオスターの悲劇」で出だしの音色を間違えたGeoffが動揺しまくっていたり、毎度のことながら「庶民のファンファーレ」でCarlがスティックでのカウントとインテンポになってからのリズム(速さ)が全然違ったりといった見せ所(?)はありましたが、後半の「全曲演奏」に向けてステージ上も客席もいまひとつ押さえ気味。この日のSteveのアコースティックギターソロは「Mood for a Day」で、さらに「Voice of America」から「An Extraordinary Life」とおとなしい演奏が続きましたが、そうしたサゲの雰囲気を打破してくれたのがCarlで、「The Heat Goes On」とそこに含まれるドラムソロですっかり客席を盛り上げておいて、いよいよ「Heat of the Moment」から『Asia』全曲演奏が始まりました。もはや各曲の一つ一つにコメントをつけることはしませんが、こうして「Heat of the Moment」から「Here Comes the Feeling」までを通して聴くと、このアルバムがいかに凄いものであったかということがよくわかります。明らかにこのアルバムの制作時には4人のミュージシャンの間にケミストリーが働いて、どの曲のどこを切っても非の打ち所がない完璧な作品が生まれたのです。そして、アルバム制作時から四半世紀を経ていま目の前にいる4人のミュージシャンは、たとえ年齢相応にかつてのパワーと正確さを失っているとしても、これらの楽曲に十分な生命を吹き込むことに成功しています。

アンコールを求める熱狂的な拍手の中で、下手SHの位置に一度はスティールギターがセットされ「Don't Cry」の演奏が予想されましたが、バンドが力尽きたか会場の時間の都合かスティールギターは引っ込められ、代わりにスタンドにセットされたギターが現れて、これはエレクトリックシタールの代わりとなってこの日最後の曲「Open Your Eyes」に用いられました。実は、終わってみれば昨日と同じく2時間ちょっと、曲数も同じでこの日が特別ハードだったというわけではないのですが、それでも『Asia』全曲演奏はバンドと聴衆の双方に緊張と一体感とをもたらした好企画だったと言えるでしょう。

さて、Asiaが再び我々の前に姿を見せる日は、果たしてくるでしょうか?

ミュージシャン

John Wetton vocals, bass, guitar
Geoff Downes keyboards, vocals
Steve Howe guitar, vocals
Carl Palmer drums

セットリスト

2008/05/12

  1. Daylight
  2. Only Time Will Tell
  3. Wildest Dreams
  4. Never Again
  5. Rounabout (Yes)
  6. Time Again
  7. Geoff Downes Solo
  8. Steve Howe Solo
  9. Voice of America
  10. The Smile Has Left Your Eyes
  11. Ride Easy
  12. Open Your Eyes
  13. Fanfare for the Common Man (Emerson,Lake & Palmer)
  14. Without You
  15. An Extraordinary Life
  16. The Court of the Crimson King (King Crimson)
  17. Video Killed the Radio Star (The Buggles)
  18. The Heat Goes On / Carl Palmer Solo
  19. Heat of the Moment
    -
  20. Don't Cry
  21. Sole Survivor

2008/05/13

  1. Daylight
  2. Never Again
  3. The Court of the Crimson King (King Crimson)
  4. Video Killed the Radio Star (The Buggles)
  5. Rounabout (Yes)
  6. Fanfare for the Common Man (Emerson,Lake & Palmer)
  7. Steve Howe Solo
  8. Voice of America
  9. The Smile Has Left Your Eyes
  10. An Extraordinary Life
  11. The Heat Goes On / Carl Palmer Solo
  12. Heat of the Moment
  13. Only Time Will Tell
  14. Sole Survivor
  15. One Step Closer
  16. Time Again
  17. Wildest Dreams
  18. Without You
  19. Cutting It Fine
  20. Here Comes the Feeling
    -
  21. Open Your Eyes