John Paul Jones
1999/12/10
渋谷公会堂で、Led Zeppelinのベーシスト兼キーボードプレイヤーJohn Paul Jonesのライブ。今年発表された彼の初のソロ作『ZOOMA』を携えてのツアーですが、彼の発想法は普通とは逆で、長らくライブから離れてプロデューサー / アレンジャー業ばかりやってきたがそろそろステージにも立ちたい、そのためにはソロアルバムを作ればよい、という思考経路だったそうです。しかもそのためにロンドンに新しいスタジオを建ててしまったというのですから何をか言わんや。
ステージ上には、向かって左にスタンドに載ったベースラップスティール、キーボードが2台(HammondのXB2とKORGのおそらくTrinity)、中央にドラムセット、右手にスティックが2台。定刻をわずかに過ぎて会場が暗くなり、歓声の中Jonesyがドラマーとスティック奏者(Nick Beggs ex-Kajagoogoo)の2人を従えて出てきました。バンドは3人だけか!と驚く間もなく、最新作のオープニングナンバーである「Zooma」がスタート。Jonesyがこの曲のメインテーマであるリフを10弦ベース(5弦ベースを複弦化したもの)でガンガン弾き始め、レコード通りの音質とパワーが正確に再現されていて驚愕しましたが、本当ならここから会場総立ちにならなければならないところなのにどういうわけか渋谷公会堂は他のホールに比べ立ち上がりにくいところがあり、内心に葛藤を抱えながら座ったまま演奏を聴くことになりました。
真ん中に10分の休憩をはさんで1時間ずつの2部構成となっていた本編では、ソロ作からはほかに12弦ベース(これも6弦の復弦版)のリフが印象的な「Grind」や「Goose」などが演奏され、またベースラップスティールの腕前を示す「Nosumi Blues」などが披露されたほか、ZepのナンバーからはまずJonesyのローズピアノのイントロが有名な「No Quarter」、ロックンロールっぽいコード進行の曲に続けてドラムがリズムパターンを変えて「When the Levee Breaks」。また新作の「Bass 'n' Drums」の中でもちらっと「Heartbreaker」のフレーズを出していて客席は大喜び。さらに「Spaghetti Junktion」は映画『Scream for Help』(1984年)のサントラからで跳ねるリズムとオルガンのリフが楽しいものでしたが、聴衆に本当に火がついたのはアンコールからで、アンコール1曲目はクラビネットのリフで組み立てられたZepナンバーの「Trampled Under Foot」。ここでとうとう総立ちとなり、続くアンコール2曲目の「Black Dog」では期せずしてコーラスが上がったほど会場に一体感が生まれました(Zepナンバーはインストでもかっこいい!)。
Jonesyは通常の4弦ベースよりも10弦、12弦の復弦ベースを多用しており、そのサウンドは多彩で驚くほどクリアなものでした。ソロ作のクレジットでもサウンドデザインシステムであるKymaに言及していますが、Jonesyの足元にAppleのPowerBookらしい匡体が見えていたことから、ステージ上でもKymaを使ってベースのサウンドをコントロールしていたようです。また、これまでなじみのなかったベースラップスティールも頻繁に演奏されており、ZepではJimmy Pageの後ろでボトムを支える役割だったJonesyに「Black Dog」などでソロ・プレイヤーの地位をもたらすのに多大な貢献をしていました。このことは、バンドのもう1人のメロディ楽器がギターではなくMIDIスティックであることによっても可能となっており、ある場面ではベースとして、またある場面ではコード楽器として、さらにはソロ楽器としてもスティックが機能することで、Jonesyのポジションを柔軟なものとしていたようです。さらにJonesyは数曲では2台のキーボードを巧みに操り、休憩後1曲だけ見せたアコースティックソロでは有名なトリプルネック(上からマンドリン / 12弦 / 6弦)でエコーのループを使った手の込んだソロ演奏を聞かせました。
ベテランらしい正確でアグレッシブなその演奏には脱帽しましたが、しかし本編中ではJonesyが楽器を交換するために舞台上が暗転するたびに拍手が途切れて静かになってしまい、ミュージシャンたちが気の毒にも思えました。Jonesyが「Very quiet...」と漏らし、ネイティブらしい観客が「We all love you, Jonesy!」と声を掛けてJonesyが「I love you, too!」と応じる場面もありましたが、本編最後までノリの悪いコンサートになってしまいました。しかし、客席も本当はもっと煽ってほしいと思っていた様子で、アンコールの「Trampled Under Foot」で立ち上がるきっかけをつかむとそれまでとは打って変わってノリが良くなってフィナーレを迎え、終演後あいさつするJonesyもどうやら満足の面持ち。その顔を見ながら会場の誰もが、もっと早くから立ち上がって精いっぱいの声援を送ってあげればよかったと思ったに違いありません。
ミュージシャン
John Paul Jones | : | bass, bass rap-steel, guitar, keyboards |
Nick Beggs | : | chapman stick |
Teyl Bryant | : | drums |
セットリスト
- Zooma
- Goose
- Grind
- The Smile of Your Shadow
- Nosumi Blues
- No Quarter
- Spaghetti Junktion
- Steel Away(including You Shook Me)
- Snake Eyes
-- - Triple Neck Solo(including Battle of Evermore)
- Crack Back
- Bass 'n' Drums(including Heartbreaker, Dazed and Confused)
- B. Fingers
- Jump Blues(including Nobody's Fault But Mine, Dancing Days)
- When the Levee Breaks
- Tidal
-- - Trampled Under Foot
-- - Black Dog