アントニオ・カナーレス
2000/04/02
フラメンコ・ダンサーとして人気が高いアントニオ・カナーレスと彼のカンパニーの舞台を、赤坂ACTシアターで観ました。
1961年セビリア生まれのアントニオ・カナーレスは、スペイン国立バレエ団から独立した後1992年に自身のカンパニーを結成し、ダンサーとしてのみならず振付家としても活動している、現代フラメンコ及びスペイン舞踏のリーダーの1人。
……という触れ込みでチケットをとったのですが、京都でフラメンコを習っている友人にメールで聞いてみると、彼女の先生は以下のような反応だったとか。
「有名なんですか?」
「うーん。僕があっち(スペイン)に行っている頃からもう自分でメンバーつれて活躍してたよ。でも、踊りは見る人の好き嫌いがあるからね」
「個性的ってことですか?」
「そうね」
なんか不安だなーと思いながら迎えた当日。さほど広くはない会場の、席は前から7列目の一番左。演目と配役は下記の通りです。
サンブラ | ||
クラケット | マヌエル・ブランコ / ポル・バケーロ | |
タンゴス | アントニオ・カナーレス / フアナ・アマジャ / フアン・デ・フアン | |
ブレリア | モンセ・コルテス(歌) / ダビ・セレドゥエラ(ギター) / イバン・ロサーダ(ギター) | |
ソレア・ポル・ブレリア | マヌエル・ブランコ / ポル・バケーロ | |
アマルゴ | フアン・デ・フアン | |
(休憩) | ||
ギター・ソロ | ダビ・セレドゥエラ(ギター) | |
ソレア | フアナ・アマジャ | |
タンゴス | ホセ・ルイス・カルモナ(歌) | |
ソレア | アントニオ・カナーレス | |
フィン・デ・フィエスタ | 全員 |
このプログラムでは、ストーリーのある作品はなく、主としてフラメンコの踊りと歌やギターのソロをつなげて構成されています。ステージの幕が開くと、奥の高いところに右からヴァイオリン、フルート、パーカッション、カホン、カンテ(歌)が何人か、下のステージ上右端にギターが3人並んで座っていました。楽器の音は非常にラウドに増幅されてスピーカーから爆音となって流れ、ライティングも動きのある洗練されたもので、先日の「ロード・オブ・ザ・ダンス」を思い出させました。オープニングの「サンブラ」の後、若い2人のダンサーが白いシャツに黒い蝶ネクタイのいでたちでステップを披露する「クラケット」。赤いドレスでど迫力のフアナ・アマジャが主役の「タンゴス」と続き、ハスキーながら力のある歌声が素晴らしいカンタオーラ(女性歌手)のモンセ・コルテスの後に、再び2人の男性ダンサーのサパテアードの応酬。そして前半の最後はフアン・デ・フアンのソロによる超絶足技。これは本当に凄いものでした。
後半も流麗なギターソロやカンテでつなぎながら、これでもかというばかりにダンサーの足技が披露されました。いずれの振付けも強烈な下半身の動きを前面に出し、ときに髪や腕までも振り乱しての回転を入れつつも、ひたすらストレートにサパテアードの妙技を見せつけるもの。そのパワーには圧倒されるものの、単調に感じられる部分もないではありません。確かに「男踊りの場合は、それができなきゃ」の足技ではあるのですが、締めくくりのアントニオ・カナーレスのソロによる「ソレア」で、ダンサーとしてはかなり横幅のあるカナーレスが全精力を舞台にぶつける長時間のサパテアードには見ている方も疲労困憊といった感じです。
それでも、最後の「フィン・デ・フィエスタ」でバンドも含め全員がステージに立ち、ギターやカンテに合わせてダンサーたちが交代で輪の中に歩み出ては即興で踊るシーンでは、やっとフラメンコのフラメンコらしい楽しみに会えたようでうれしくなりました。