世界四大文明 インダス文明展

2000/10/15

東京都美術館(上野)で開催されている「インダス文明展」へ行ってきました。先日の「エジプト文明展」とは大違いで、空いているとまでは言わないもののゆとりをもって入場し、展示物を観ることができました。

インダス文明は紀元前2600年頃から1800年頃にかけて高度な都市文明を持ち、メソポタミア国家とも盛んに交易して栄華を誇ったものの、その後インダス川の流路の変化や塩害などによって衰微し、紀元前1500年頃のアーリア語族の侵入とともに歴史の中に埋没していったとされる短命な文明です。「モヘンジョ・ダロ」「ハラッパー」といった古代都市の名前は知識のかけらとして頭にありましたが、その他の予備知識はまったくないままに展示室を回りました。

展示品は土器、土偶、印章、装身具が中心で、土器のフォルムや文様ののびのびとした美しさ、土偶のユーモラスな造形、装身具の見事な色合いと細工はいずれも素晴らしいものですが、興味深く見たのはやはりモヘンジョ・ダロや近年注目を集めているドーラビーラーなどの都市計画の解説でした。主として焼成レンガを材料として建築されたモヘンジョ・ダロは城塞部と住居部とに分かれ、住居には行き届いた区画設計と下水道施設が施されています。住居の中にある井戸や沐浴場には排水溝があって路地からメインストリートの下水溝へ流れるようになっており、ダストシュートやごみ集積場まであったといいますから近代的です。一方、ドーラビーラーは石が素材として用いられ、さらに岩盤を掘り下げた貯水池があって、屋根に落ちた雨水は集められ、水路を通って貯水池に導かれるようになっていたという説明がきれいなCGで解説されていました。面白いのは「さわってみよう!」コーナーで、実際に出土したレンガに触ることができました。レンガは石のように固く冷たかったのですが、その近くには犬らしい動物の足跡がくっきりついたレンガなども展示してあって親近感を覚えました。

  • ▲モヘンジョ・ダロ出土の「神官王」像。実物は意外に小さいが、気品と威厳に満ちている。
  • ▲メヘルガル出土の土器。展示されている土器はいずれも堅く焼き締められ、躍動的な文様や写実的な図案が施されている。
  • ▲土偶。不思議な仮面(「もののけ姫」を連想)をかぶったような顔が面白く、ヘアスタイルはどれもモダン。
  • ▲モヘンジョ・ダロの景色。緻密に設計された都市計画には感心するばかり。

会場を出てから久しぶりにアメ横をふらふら歩いてみたら、目についた店が「インド料理マハラジャ」。インダス文明の担い手たちがタンドーリチキンやシシカバブを食べたとは思えませんが、細かいことは気にせずここで昼食にしました。