Dream Theater

2008/01/15

定期便のように2年ぶりにやってきたDream Theaterのライブを日本武道館で観ました。最新作『Systematic Chaos』をフィーチュアしたツアーで、普通ならアリーナ席がとれて喜ぶところですが、このバンドに限っては「げっ!」という感想。なにせ確実に3時間近く立ちっ放しになってしまうから……。で、ライブを終えた今、予想通り両膝ががくがくです。

ステージの上空にぶら下げられたシグナルがレッドからイエローに変わり派手な弦のBGMになって開演間近が告げられ、グリーンになるとともに暗転。大歓声の中、過去のライブ映像のメドレーが流れるうちにJordan Rudessのハゲ頭が現れて「ツァラトゥストラはかく語りき」の生演奏にスイッチ。最後に映画『2001年宇宙の旅』をパロって宇宙の夜明けにDream Theaterのロゴが浮かび上がり、一転して激しいギターリフからメタリックな「Constant Motion」。明るくなったステージ上にはいつもの配置でメンバーが並び、例によって中央奥のドラムセットは2台のキットをつなげた巨大なものですが、今回目をひくのはキーボードブース。メインのKORG OASYSのスタンドとContinuum Fingerboardの2本のスタンドが立っているのは前回のツアーと同じですが、今回はOASYSの上、右手側にKORG RADIASの音源部、左手側にManikin Electronic MEMOTRONが配され、かなりごてごてした印象です。そんな観察を続けているうちに曲はこれまたアップテンポな「Never Enough」に移り、ベースのJohn Myungのよく動く左手に見惚れます(でも相変わらずベースの音は小さい)。ハードな曲が続いたところで、Jordanのキーボードがコードを弾き、静かにギターが加わってJames LaBrieが歌い出したのが、『Images and Words』の名曲「Surrounded」。このときMike Portnoyはツインモンスターの向かって左セットでドラムを叩いていましたが、John Myungが右セットの椅子に腰掛けてMike Portnoyと言葉を交わしながらベースを弾いている姿が後方のスクリーンに大映しされて大ウケ。James LaBrieのボーカルも高音を出し切って歓声を浴び、さらにJordan Rudessがワイヤレスのショルダーキーボードをぶら下げてステージ中央に進出してソロ〜ギターとのユニゾン。彼がこうしてステージを歩き回るのは初めて見ました。そして長いギターソロからPink FloydとMARILLIONが引用されてエンディングへ。

最初の2曲でけっこう疲れていたので、「Surrounded」以降はメロディアス路線に転じることを期待しましたが、続く曲はまたしてもゴリゴリしたギターのリフから始まる「The Dark Eternal Night」。曲は好きになれないタイプのものですが、スクリーンには邪悪な顔立ちのメンバーが5人が「N.A.D.S.」(North American Dream Square)の装甲車に乗って登場し、貧民たちを操り人形のように支配する巨大オオカミや一つ目の化け物を退治するアニメーションが笑えます。このアニメーションがあまりに面白いので、肝心の演奏が耳に入らなくなるくらいです。やがてステージ上はJordan1人となり、ショルダーキーボードでの長いソロからContinuum Fingerboardに移って聞き覚えのあるメロディラインになったと思ったら、そのままDerek Sherinian時代の「Lines in the Sand」。Jamesのシャウトも絶好調、中間部の幻想的に揺れるサーチライト群も美しく、この曲は個人的に今回のライブの白眉となりました。

ピアノのイントロから入った「Forsaken」は、短調のボーカルラインが極めて美しく、新譜の中でも最も好きな曲で、この曲の演奏も素晴らしいものでした。背後には、JamesまたはJohn Petrucciらしきヒゲのロッカーとヴァンパイヤの美女が絡むアニメーション。その後も、「The Ministry of Lost Souls」、休憩をはさんで「In the Presence of Enemies」と新譜からの曲が続きます。特に後者は、アルバムでは二つのパートに分離してアルバムの最初と最後に配置されていたものを作曲時の本来の姿である通しでの演奏としたもので、John Petrucciのギターの音作りが最高でした。特徴的なリフも、ロングトーンの艶やかなソロも、日本武道館でこれだけブライトで美しいエレクトリックギターの音に接したのは初めてです。そして、全楽器が全力疾走した後に壮大なクライマックスを迎えるドラマチックな構成は、これぞDream Theaterという感じ。

……とは言うものの、あまり聴き込めていなかった新譜からのヘヴィかつ長い曲のオンパレードには正直つらいものを感じていたのですが、ここからはおなじみの曲が並んでうれしく思いました。「Home」は『Scenes From a Memory』から。よく考えられたドラムのパターンが饒舌で、最後に延々と続く19/16拍子に身体を合わせると楽しくなってきます。「Misunderstood」は『Six Degrees of Inner Turbulence』収録のスローでマイナーな曲であまりライブ向きとは言えず会場が鎮静してしまったのですが、それを挽回するように『Images and Words』から「Take the Time」が選ばれて、ベースの「パオーン」という効果音に合わせてMike Portnoyがぐいっと腰を突き出すお茶目なフリを入れて、本編終了。

アンコールはメドレーで、最初の「Trial of Tears」のスペーシーなイントロではJohn PetrucciがRushの「Xanadu」を引用し、James LaBrieも歌詞の中の「New York City」を「Tokyo City」と替え歌にするサービスがありました。そして、「In the Name of God」でのあり得ないスピードのユニゾンプレイを織り込んで、最後には「Octavarium」の荘厳なエンディング部分が演奏されて、終了。

今回のライブのセットリスト(後掲)については、最近の作品に顕著なダークでヘヴィな曲が多過ぎるという点が不満として各方面で非難され、実際自分自身もちょっとつらいなと思う点もあったのですが、しかしこれが「今」のDream Theaterなのですから、オーディエンスはそれを受け止め、ノスタルジーに縛られない評価を下していかなければならないでしょう。曲調の変化はともかく、圧倒的な演奏力は引き続き健在で、キーボードがやたらに音符を詰め込もうとする点を除けば素晴らしい演奏でした。ステージのつくりも凝っていて、街灯やロゴ入り交通標識、シグナルやアンプの上に蟻、など『Systematic Chaos』のジャケットがそのままステージ上に再現されたかのようなセット。たった一晩限りのライブのためにこれだけ膨大な機材とセットを持ち込み、組み上げてくれたバンドとスタッフに感謝しつつ、日本武道館を後にしました。

ミュージシャン

James LaBrie vocals
John Petrucci guitar, vocals
Jordan Rudess keyboards
John Myung bass
Mike Portnoy drums, vocals

セットリスト

  1. Constant Motion
  2. Never Enough
  3. Surrounded
  4. The Dark Eternal Night
  5. Keyboard Solo / Lines in the Sand
  6. Forsaken
  7. The Ministry of Lost Souls
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  8. In the Presence of Enemies
  9. Home
  10. Misunderstood
  11. Take the Time
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  12. Trial of Tears / Finally Free / Learning to Live / In the Name of God / Octavarium