PSP
2010/02/26
STB139(六本木)で、PSPのライブ。PSPというのは、ドラムのSimon Phillips、キーボードのPhilippe Saisse、ベースのPino Palladinoのそれぞれの頭文字をとったネーミングで、この3人のうちSPはJeff BeckやToto、それに彼自身のバンドの来日で何度も見ていますし、PPもJeff Beckの2005年のツアーでその着実な演奏に触れています。一方PSについてはまったく予備知識がありませんでしたが、フランス人の彼はAl Di Meolaの作品に貢献しているほか、日本人アーティストとも交流が深いようです。
この3人のユニットのお披露目は2009年の日本公演で、そのときのライブの様子は、CD『PSP LIVE』で聞くことができますし、下の映像でも雰囲気が十分に伝わってきます。
「当日券あり」という貼紙がちょっと寂しいSTB139に入ると、ステージ上手にはSPの巨大なドラムセットが鎮座。中央にはPPのベースがフレッテッド / フレットレスとりまぜて3本、そして下手にはPSのキーボードが4台ですが、そのうち客席側の上段は懐かしのMinimoogです。会場全体のほぼ中央の位置に席を占めて、BGMのJeff Beck『There and Back』(SP参加作品)を聴きながらギネスのワンパイントをちびちびやっているうちに、渋滞にはまって待ち合わせに遅れていたありか先生も登場。この会場、連れが後から来ると受付で言うと先に入って場所をとらせてもらえるし、名前を告げておけばちゃんと案内もしてくれるのがうれしいところです。
ほぼ定刻にシンセのコード連打が鳴り出して、やがて場内が暗くなりステージ上に青い光が踊ると、メンバーが登場しました。そこからパーカッションのパターンとともに演奏されたのは、『PSP LIVE』でもオープニングを飾る「Mancara」。ついで「Vigilante」と題する新曲は11拍子のトリッキーなリズムで始まり、PSの美しいMinimoogの音色とRhodesソロが印象的。SPのユーモアを交えたMCの後は「Monday Afternoon」、そして摩訶不思議な雰囲気の「Bela's Boogie」。この辺り、打ち込みの音はSPが左手側に置かれたMacでコントロールし、またPSもキーボードの一つでサンプリング音を効果的に使用していました。
PSがMCで残りの2人をThe best rhythm section in the world!!
と紹介して、次に披露されたのは意外にもReturn To Forever「Sorceress」。上述の通りPSがAl Di Meolaと組んでいた関係で選曲されたのでしょう。ついで「What's Wrong With You」は『PSP LIVE』2曲目の曲。SPの細かいゴーストノート、PPによるフレットレスベースソロ、そして終盤では強烈なドラムが会場を圧倒します。ピアノのパターンがスクエアにカウントすると6/8+3/8、しかし大らかにシャッフルと解釈するとすんなりリズムに乗れる「Blue Rondo a la Turk」(Dave Brubeck作曲ですが、Emerson, Lake & Palmerのアンコールの定番の「Rondo」も原曲はこれだということに後で気が付きました)、PSの癒し系キーボードソロ、いい知れぬ哀愁が漂う「Masques」、タムの音程感を存分に活かしたSPの長大なドラムソロと続いて、さらに3曲。特に最後に演奏された「Flux Capacitor」はほとんどロックと言っていいくらいの豪快さと疾走感に満ちた曲で、会場は興奮の坩堝となりました。
アンコールは、SPのスティックによるカウントを観客も手拍子でフォローして始まった、典型的なブルース進行によるPPのベースパターンが心地よい「Roppongi Blues」。そして、SPのソロ作品である「Indian Summer」でキーボードとベースが曲の骨格をキープした上にSPが怒濤のドラムソロをかぶせてきて、最後はツーバス連打のド迫力が観客を圧倒し尽くしました。
SPは長身のPPと並んで立つと頭一つ分も身長が低いのですが、その小柄な身体からは想像もつかないほどの凄いパワーとテクニックが相変わらず。PSも自由自在なピアノタッチに加えて、レガシーなMinimoogとサンプラーも交えたテクノロジーを巧みに使い分けてカラフルな音色を紡ぎ出していました。ちょっと残念だったのはPPのベースの音。メインはFender Jaguar Bassで、フレットレスはMusicmanのStingrayですが、会場の特性なのか彼の好みなのか、あるいはSPのパワードラムに対抗するためには仕方ないのか、音圧重視でヌケが悪い音づくりになっており、彼の指使いの巧みさを堪能することができませんでした。全体に音がかなりラウドで、曲によってはピアノ音が耳に痛い周波数を出していたりしたために、聴覚が商売道具であるピアノ調律師ありか先生の耳を心配しましたが、終演後に聞いてみたところありか先生曰く「面白かった〜」だそうなので、一安心。
またこの日は、上記の通り『PSP LIVE』に収録されていない曲も何曲か演奏され、そのいずれも素晴らしい曲でした。いくつかの曲は、彼らのYouTubeチャンネルで聴くことができますが、それらを収録した彼らのスタジオ盤のリリースが待たれるところです。
ところで、SPのサイトを見てみたところ、次のような告知が2月26日付けでなされていました。
Toto reforming in summer 2010
Former members of Toto are reforming for a brief tour this summer in Europe to honor their brother Mike Porcaro who is living with ALS (Lou Gehrig's disease). The line-up will include David Paich, Steve Lukather, Steve Porcaro, Simon Phillips, Joseph Williams and special guest, Nathan East.
The exact tour schedule will be announced as soon as it´s confirmed.
この組み合わせで、日本にも来てくれないかな……。
ミュージシャン
Simon Phillips | : | drums |
Philippe Saisse | : | keyboards |
Pino Palladino | : | bass |
セットリスト
- Mancara
- Vigilante
- Monday Afternoon
- Bela's Boogie
- Sorceress
- What's Wrong With You
- Blue Rondo a La Turk
- Philippe Saisse Solo
- Masques
- Simon Phillips Solo
- ***
- ***
- Flux Capacitor
-- - Roppongi Blues
- Indian Summer