塾長の鑑賞記録
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塾長の鑑賞記録

Journey

2013/03/11

Journeyの来日は、2009年以来。私にとっては2004年以来で、なおかつ彼らの武道館公演は1983年以来ですから実に30年ぶり。30年前に観たときのJourneyのヴォーカリストはもちろんSteve Perryで、2004年のときはSteve Augeriでしたが、その後一時的にJeff Scott Sotoを入れた後、YouTubeで見出されたというフィリピン人ヴォーカリストArnel Pinedaを2007年に迎えていて、今回の来日ももちろんArnelがフロントを勤めます。正直に言うと、今さらJourneyを聴きに行くのもなんだかなあという気はしたのですが、そこはそれ、アメリカンロックの最良のバンドの一つのライブですから、安心感を買うという感覚でチケットをゲットしました。

前座は、「Madison Cain & Miles Schon」。その名前からわかる通り、JourneyのキーボードプレイヤーであるJonathan Cainの娘がヴォーカル、ギタリストであるNeal Schonの息子がやはりギターというデュオで、ステージ上ではこの2人にサポートのアコースティックギタリストが1人ついていました。全部で5曲ほどを演奏しましたが、Madison Cainの声の伸びは素晴らしく、情感のこもった歌と演奏を十分に聴かせてくれました。

そして、しばらく間を置いてJourney。会場が暗転して歓声が湧き上がり、鋭いサーチライトがゆらゆらとステージ上を揺れる間にメンバーが登場して、「Separate Ways」からスタートしました。「Any Way You Want It」「 Ask the Lonely」とアップテンポな曲を畳み掛けるように3曲連続させ、以後も大ヒット曲のオンパレード。予想通り『Escape』『Frontiers』からの曲が中心でしたが、私の好きな「Only the Young」も演奏されましたし、兄弟曲の「Lights」と「Stay Awhile」を、前者はバンド形式でストラトの繊細な音を聴かせ、後者はアコースティックギターとヴォーカルの組合せでしっとり聴かせて、と多彩な演奏を披露してくれました。そして、こういう一歩メインストリームから離れた曲のちょっとひねったアレンジに反応する聴衆の姿を見ていると、この日ここに集ったファンがきちんと筋金入りであることが感じられてうれしくなってきます。

ドラマーのDeen Castronovoは、全身を目いっぱいに使ったダイナミックなドラミングにもかかわらず出だしの数曲ではスネアの音がほとんど出ていなくてどうなることかと思いましたが、PAが徐々に修正されて何とか事なきを得た感じです。その彼がリードヴォーカルを勤める曲が2曲。Deenは通常はヘッドセットにつけられたマイクでコーラスを歌っているのですが、リードヴォーカルのときはこれ見よがしに背後にスタンドを立ててマイクをぶら下げて自分が歌っていることをアピール(?)していました。また、Jonathanも2004年と同様に「Just the Same Way」でGregg Rolieのパートを上手に歌ったほか、曲によってはギターも弾き、また「Wheel in the Sky」では予想外のハーモニカソロを聴かせました。

しかし、何といっても会場を盛り上げたのは、ヴォーカリストArnel Pinedaです。小さな身体のどこからあれだけのパワーが出るのかと思うくらいの声を出し、しかもその声質はSteve Perryに生き写し。ステージを走り回り、跳びまくって聴衆を煽り続けたArnelですが、一方、しっとりと歌い上げた「Faithfully」ではバラードでこれだけ盛り上がるのは珍しいと思えるほどの歓声も集めました。既に解雇されてしまったYesのBenoît DavidもYouTubeからの採用だったと聞いていますが、ArnelはもはやJourneyのフロントマンとして十分なアピール力を身に付けているように思えます。また、この日の武道館には相当な台数のカメラが入っていましたが、これはWOWWOWでライブ放送するためだそうで、その映像はステージ横のスクリーンにも映し出されており、臨場感を高めるのに一役買っていました。とりわけ、Arnelの背後から彼の背中越しにアリーナ席の聴衆の広がりを映し出したショットでは、神々しいほどにArnelのオーラが感じられました。さらに、リードシンガーのバックを支えるJourneyならではの鉄壁のコーラスも健在で、曲によって、あるいはパートによってリードシンガー以外の4人がさまざまな組合せでコーラスを聴かせ、たとえば「Escape」ではNeal以外による見事な三声コーラスとArnelのリードとが交互に繰り返されたりしました。

「Wheel in the Sky」が閃光に包まれるドラムの乱打で幕を閉じた後に、Arnelがちょうど2年前の津波のことに言及し、そして本編最後の曲として歌われたのは「Don't Stop Believin'」。2004年に聴いたときは何となく平板な演奏に思えたこの曲が、今回はポジティヴなメッセージ性に満ちた感動的な曲に聴こえたのですから不思議です。それがArnelの表現力によるものなのか、聴き手の受け止め方の違いによるものかは不明。なお、WOWWOWはこの記念の日のライブを放送すると同時に全国18カ所のワーナー・マイカル・シネマズの劇場で同時生中継するそうで、被災地である東北3県(岩手県・宮城県・福島県)の4会場については料金を無料とし、その他14会場での収益金も寄付するそうです。

アンコールの「Be Good to Yourself」の演奏が終わるとバンドは終演の挨拶をするために横一列に肩を組みましたが、Arnelの小ささに会場からどよめきにも似た歓声が湧きました。それは、彼から放射され続けた溢れるばかりのエネルギーとのギャップの大きさに対する驚きであったことでしょう。Nealがありったけのピックを、Deenもまたありったけのスティックを惜しげもなくアリーナ席の聴衆に振る舞って、そしてバンドはArnelの「Thank you!!」という言葉を残してステージを後にしました。

ちなみに、Arnel Pinedaのサクセスストーリーにフォーカスしたこういう映画も、近日公開だそうです。Journeyファンなら、ぜひ。

ミュージシャン

Arnel Pineda vocals
Neal Schon guitar, vocals
Jonathan Cain keyboards, guitar, vocals
Ross Valory bass, vocals
Deen Castronovo drums, vocals

セットリスト

  1. Separate Ways
  2. Any Way You Want It
  3. Ask the Lonely
  4. Who's Crying Now
  5. Only the Young
  6. Guitar Solo 〜 Stone in Love
  7. Keep on Runnin' [Deen Vocals]
  8. Edge of the Blade
  9. Faithfully
  10. Lights
  11. Stay Awhile
  12. Keyboard Solo 〜 Open Arms
  13. Just the Same Way [Jonathan / Deen Vocals]
  14. Escape
  15. Dead or Alive
  16. Guitar Solo 〜 Wheel in the Sky
  17. Don't Stop Believin'
    -
  18. Be Good to Yourself

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