Simon Phillips

Imp. 963

2026/07/06

ブルーノート東京(南青山)で、Simon Phillipsのライブ。3日間6ステージのうち最終ステージを観てきました。前回の来日は2024年7月だったので、ちょうど2年ぶりということになります。

今回の来日は、今年リリースした『Protocol 6』を携えてのツアーの一貫で、メンバーは前作のレコーディング及び過去2回の来日に参加していた若いサックス奏者Jacob Scesneyが20年以上のキャリアを持つPhillip Whackにチェンジしています。

メンバーは変わってもステージ上の風景はさして変わらず、上手のキーボードはnordの二段重ねと左手側にRoland Junoです。下手には相変わらずの要塞ドラムがステージの面積のかなりの部分を占めており、その前にはテナー・アルト・ソプラノの3本のサックスがスタンドに立て掛けられていました。中央奥にはベースアンプとベースがありましたが、その前に立つギターの足元はすっきりHelixでダイレクトにライン出しされている様子です。

定刻になって登場したSimon Phillipsは、マイクをとると「ミナサン、コンバンワ」。ついでメンバーを紹介してから、今夜は新譜『Protocol 6』からすべての曲を演奏すると説明して喝采を浴びました。以下、演奏された曲のタイトルとそれぞれについてのピンポイントのコメントを。

Andromeda

音麻呂のピアノから始まる新譜のオープニングナンバー。ガタイのいいキーボード、ベース、サックスに囲まれて、すらっと細身のAlex Sillが精悍な表情で艶やかな音色のギターソロを聞かせます。初めて聞くPhillip Whackのサックスはフレージングが摩訶不思議な感じですが、折々に入るユニゾンがびしびしと決まる快感はこれまで通りです。

Unstable Grounds

曲名とは裏腹にファンキーでタイトなスラップベースのリフが小気味よいグルーヴを叩き出す曲。Simonのソロパートではツーバスの音圧が強烈。

As the River Flows

Simonのタム、オクタバン、ピッコロスネア、ハイハットを組み合わせた6/8拍子のパターンが特徴的で穏やかな曲。アルバムでは3曲目は次の「Intrepid Traveller」ですが、順番を入れ替えてありました。

Intrepid Traveller

ピアノの低音と細かいハイハット&リムショットの上にクリーントーンのギターが重なるイントロが不穏な雰囲気を醸し出す曲。この曲でのサックスソロもエキセントリックな感じでしたが、ドラムソロの背後で使われていた電子音のシーケンスはSimonがトリガーをヒットしていたのかな?

この曲が終わったところで前に出てきたSimonがあらためてメンバー紹介を行ったら、すぐにアルバム後半の演奏に移ります。

Code 4 Kryptos

5/8+5/8+4/8+3/8というややこしい変拍子のパターンにシタールっぽいギターが重なってエスニックな雰囲気を作る曲。Alex Sillのギターソロではロック寄りの速弾きの妙技が聞かれました。そしてここでも、鉄壁のユニゾンですぱっと曲が終わるエンディングが鮮やか。

Guitar solo / Sundown in Old Town

2年前にもあったように、ここでもまずAlex Sillのソロが置かれました。前回はルーパーを使った一人多重でしたが、今回は空間系のエフェクトを効かせたクリーントーンでコードを重ねていくオーセンティックな美しい小品。そのギターの音色が変わるところへシンバルが滑り込んできて、アルバムのラストナンバーである「Sundown in Old Town」。繊細なシンバルワークの上にソプラノサックスやピアノが情趣を(でもテンション感満載で)添えて、しっとりと終わります。

Event Horizon

本編最後の曲は、全部で三つのパートからなる大作「Event Horizon」。シュバルツシルトなその曲名にふさわしく、アコースティックでありつつ緊張感に満ちたギターとピアノのパターンから始まり、いきなり力強いドラムによって覚醒させられるドラマチックな展開を示します。牽引力満点のリズムセクションが曲調を変化させていく中で、トリッキーなリズムを持つ高速ユニゾンを間に挟んで次々に受け渡される各楽器のソロは圧巻。しかし、最後はテーマとなるリフが繰り返された後に沈静化して、ピアノとソプラノソックスでそっと締め括られます。

これで『Protocol 6』からの全曲演奏が終了し、ステージ上に並んだメンバーは盛大な拍手と喝采を浴びています。ここで、近年のクラブでのライブではステージを降りずにそのままアンコール演奏に入るケースが少なくありませんが、この日の彼らはいったんドレッシングルームに下り、手拍子の中を再びステージに戻ってきました。そして「(『Protocol 6』の曲は)6回演奏したのでもう演らないが、もう一度聴く方法がある。それはCDを買うことだ」とやって大ウケになった後、Simonはブルーノート東京の音響・照明・フロアのスタッフたちへの謝辞を述べ、バンドメンバーと聴衆に対しても感謝を伝えて、最後の曲に進みました。

Circle Seven

最後に演奏されたのは、『Protocol III』(2015年)から、その名が示す通り7拍子を基調とする「Circle Seven」。ひとしきりテーマが演奏された後に、Alex Sillが上手へ移動してステージ上を見守るかたちになってサックスとエレピとの長大な掛合いが展開。Protocolのステージでここまでフリーに弾きまくるスタイルのバトルが披露されたのは初めてではないかと思うくらい白熱した応酬が続きました。スネア連打を合図に曲は次のステージに移ってドラムソロ、さらに硬質なベースソロから伸びやかなギターソロ。最後は全楽器でのユニゾンをSimonのツーバス連打の轟音が飲み込んで、ラストふた打ちで終曲となりました。

毎回似たような感想になりますが、難易度の高い楽曲を正確に、しかも熱量高く演奏するこのバンドのライブは至上です。Simonの両腕とも言えそうなOtmaro RuizとErnest Tibbsの鉄壁ぶりは言うに及ばず、上述の通り貫禄を増したAlex Sillもバンドの顔になった感がありますし、新加入のPhillip Whackもステージ上の力学を変えて新鮮な景観を作っていました。そしてもちろんSimonの唯一無二のドラミング。これほどのレジェンドドラマーが折々に来日してそのステージを見せてくれることは、我々にとって幸運以外の何ものでもありません。

なお、Simonはもう一度聴きたければCDを買うようにと言って笑いを誘っていましたが、CDではこの日体験したダイナミズムを再現することはできません。ついては、来年か遅くとも再来年には『Protocol 7』を制作してもらって、また来日してくれることを強く希望します。

ミュージシャン

Simon Phillips drums
Otmaro Ruiz keyboards
Ernest Tibbs bass
Phillip Whack saxophone
Alex Sill guitar

セットリスト

  1. Andromeda
  2. Unstable Grounds
  3. As the River Flows
  4. Intrepid Traveller
  5. Code 4 Kryptos
  6. Guitar solo / Sundown in Old Town
  7. Event Horizon
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  8. Circle Seven