Eddie Jobson
2026/02/24
ビルボードライブ東京(赤坂)でEddie Jobsonの2ndショウ。開場19時30分、開演20時35分、終演は21時50分頃。

2015年のU.K.ファイナルライブをもって演奏活動から引退[1]したはずのEddie Jobsonでしたが、それから10年たった昨年、「Eddie Jobson U.K. Revisited」と銘打って彼が来日するというニュースが伝わってきたときは目を疑いました。どういう心境の変化によるものなのかはわかりませんが、この来日(東京・横浜・大阪)の後にはプログレイベントとしてさまざまなバンドが出演する「Cruise to the Edge 2026」でのショウも予定されているということですから気合いが入っています。Eddie以外のメンバーは、ベース&ボーカルが故Keith Emersonとのコラボレーションで知られるMarc Bonilla、ギターはFrank ZappaのバンドにもいたMike Keneally、そしてドラムがあのMarco Minnemannです。
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まずは機材チェック。ドラムは左手側にゴングバスとセカンドスネアを置きタムの配列もイレギュラーないつものセット。ギタリストの足元にはマルチエフェクターFM9が置かれ、ベーシストの右足側にRolandのペダルキーボード、左足側にやはりFM9、さらにこれらの間に正体不明のエフェクターらしきものがありますが、演奏中Marc Bonillaは歌のパートで頻繁にオンオフを繰り返していたので、ボーカルに対するエフェクトだったのかもしれません。ベースはレフティ仕様のStingray、そしてキーボードは例によってInfinite ResponseのMIDIコントローラーの二段重ねです。


一通り機材チェックを終えたら最上段のカジュアル席に戻って、ハイネケンを飲みながらのんびり開演時刻を待ちました(なお、今回のショウは演奏中の写真撮影が禁止されています)。
Alaska / Time to Kill
定刻を5分ほど回ったところで客席の照明が落ち、拍手に迎えられてEddieが登場して、ひんやりしたブルーのライトが暗く照らすステージに上がるとあの重低音から「Alaska」スタート。以前クラブチッタで体験した吐き気を催すほどの強烈さではなかったものの、それでもこの会場内のあちこちから共鳴によるビリビリとした振動音が聞こえてきました。その後、順次メンバーがステージに上がり黒づくめの4人が揃ったところでキャラキャラとしたシーケンス音の中にMarcoの4カウントが鳴ってリズムイン。Marcoが引き締まったリズムを叩き出してくれているので安心して観ていられます。さらに曲は「Time to Kill」へ移りMarcのボーカルが入ってきますが、やや音量抑えめながらしっかり声を客席に届けていました。そしてこの曲の後半ではもちろんクリスタルのバイオリンが登場し、下から当てられるオレンジの光の中でキラキラ輝きましたが、フレージングは原曲に比べてやや省エネ模様でした。
Danger Money
イントロの白玉パターンではMarcがJohn Wettonと同様にベースペダルを踏み、Marcoのパワフルなドラムが1979年に中野サンプラザで観たTerry Bozzioを思いださせます。中間部のキーボードが8分で刻むパターンをEddieは律儀に右手で弾き、その後のソロパートも右手はオルガンのまま左手でシンセソロを弾いていました。この曲でのボーカルではMarcは苦戦していたように感じましたが、もともとJohn Wettonは自分の声域を度外視してボーカルのメロディーを作る悪い癖があり、しかも1979年にはTerry Bozzioが受け持っていた掛合い部分を含めてMarcが一人で歌っているのだから大変です。聞くところによればギタリストのMikeは歌も歌えるとのことなので、せめてこの曲だけでもコーラスを担当してもらえばよかったのに。
Rendezvous 6:02
そんなこちらの呟きが聞こえたわけではないでしょうが、Mikeは上手袖に寛ぎステージ上がトリオ編成になって、リリカルなピアノから始まる「Rendezvous 6:02」。Marcoが再現するシンバルとタムの繊細なパターンが面白く、Marcのベースも歌いながら弾くには難しそうな細かいフレーズを連ねていましたが、この曲の最大の聴きどころである中間部の野太いシンセソロは、演奏は完璧!なのに音量がやや小さかったのが惜しまれます。
この曲が終わったところで、にこやかな表情のEddieが前に出てきてMCを行いました。
- 初めてU.K.が来日した1979年のコンサートにいた人はいる?(→大きく手を挙げてアピール)
- 最後のコンサートはJohn Wettonとの2015年だった。それから11年たってカムバックできてうれしい。ありがとう。
- トップミュージシャンたちを紹介しよう。Emersonバンドから今日はギターではなくベースでMarc Bonilla、Zappaバンド(一緒に演奏したことはなかったが)からMike Keneally、そして余人をもって代え難いMarco Minnemann。
By The Light of Day / Presto Vivace / In The Dead of Night
「By The Light of Day」の美しいコーダ部分から始まり、いったんシンセサイザーのみになってからドラムが力強くフェードインしてきてキーボードとギターがユニゾンで速弾きの技を競う「Presto Vivace」。そして第1期U.K.を代表する曲である「In The Dead of Night」。MikeのギターソロはAllan Holdsworthのタイム感もフレーズもややこしいソロを忠実に再現するものでした。
Nevermore
過去に何度か演奏されてはいるものの、毎度なんらかの失敗を含む演奏になってしまう難曲ですが、今回はほぼ完璧です。失敗しやすい原因のひとつは原曲で使用されていたYAMAHA CS-80ならではのフレーズをサンプリング音に置き換え、これをアサインしたキーを演奏の最中に適切なタイミングで打鍵する必要があるためですが、この点での破綻は見られなかった上に手弾きのパートの指捌きも華麗。もっとも、Eddieの手元ばかりをオペラグラスで見入っていたために他の三人が負けず劣らず難しいことをしているところを見損なってしまいました。
Carrying No Cross
この曲もギタリストは袖で休憩。イントロのエフェクトがかかったピアノ連打からブラス音がフェードインしてきてそこへ時間を止めるようにかかる「STOP!」の声は、今は亡きJohn Wettonのものです。そこからのMarcのボーカルも情感がこもって、この日一番のボーカルワークになりました。そして力強いマーチ風のピアノに導かれて6分半ほども続くインストパートはこの曲の、と言うよりアルバム『Danger Money』の最も感動的なパートですが、シーケンサーが鳴る上に単音シンセが重なり、そこへドラムが入ってきたところからしばらくEddieはリズムをつかまえるのに苦労していたようでしたが、リズム隊の二人が押し切ってくれて大団円に持ち込むことができました。
Caesar's Palace Blues
Eddieがバイオリンを胸の前に抱えて前に出てきて、Marcoの5カウントでスタート。イントロのロングトーンや続くピチカートはこの姿勢で弾かれ、ベース、ギターとのユニゾンになってようやく肩の位置に構えられた後、カラフルでテクニカルなフレーズを噴き出し始めます。Marcoのドラムはこの曲でも大暴れ、Mikeのギターはコードとユニゾンのみ、そして声域が合わない様子のMarcは音程を変えて歌っていました。
いったんステージ上に揃って客席に挨拶をした四人でしたが、ひとしきり拍手を受けてからそれぞれの位置に戻ってアンコールに臨みます。
Night After Night
イントロの高速フレーズをEddieのキーボードとMikeのギター(両手タッピング)がユニゾンで奏で、そして堂々たるマーチ風の曲調が感動的(しかし歌詞はずいぶんパーソナル)、そして中間のオルガンソロが雄渾な人気曲です。1979年に日本で初めて演奏された歴史を持つ曲でもあり、日本のファンにとってはとりわけ思い入れのある曲と言えます。
The Only Thing She Needs
ドカドカとMarcoのドラムが入ってきて、ラストソングは血湧き肉躍るこの曲。どこまでも突っ走るMarcoに負けじと他のメンバーもフルパワーで対抗します。中間部のバイオリンソロもあの突き刺さるような鋭い音で弾きまくり、ギターがオブリガートでつないでくれてこれまた刺激的なオルガンソロへ突入。最後はEddieが高々と掲げた片手を颯爽と振り下ろして終了です。
総立ちの観客に見送られて、一同はにこやかにステージを後にしました。もちろん「原曲の再現度」だけに注目してしまうとところどころにミスタッチやリズムの揺らぎがあり、またボーカルの弱さも感じなかったと言えば嘘になるのですが、ライブバンドとして十分な熱量と技のキレを見せてくれた彼らの演奏に不満は一切ありません。そして現在70歳であり、これが演奏家として最後の来日となるであろうと本人が語っている[2]Eddie Jobsonが自分の全盛期に作った難曲の数々に正面から取り組み、こうしてすばらしい演奏を披露してくれたことに敬意を表し、私もまた大きな拍手を彼らに送り続けました。
ミュージシャン
| Eddie Jobson | : | keyboards, violin |
| Marc Bonilla | : | vocals, bass |
| Mike Keneally | : | guitar |
| Marco Minnemann | : | drums |
セットリスト
- Alaska / Time to Kill
- Danger Money
- Rendezvous 6:02
- By The Light of Day / Presto Vivace / In The Dead of Night
- Nevermore
- Carrying No Cross
- Caesar's Palace Blues
--- - Night After Night
- The Only Thing She Needs
脚注
- ^Eddie Jobsonが最後に人前で演奏を行ったのは、2019年のRoxy Musicの『The Rock and Roll Hall of Fame』殿堂入り式典。
- ^「プログレ界の才人、エディ・ジョブソンが語るU.K.再訪と「最後の来日」の真意【独占インタビュー】」『Rollin Stone Japan』。



